人材サービス大手のエン・ジャパンが運営するリファレンスチェックサービス「ASHIATO(アシアト)」が22年、人事担当者400人に行った調査では、78.3%が活躍できる人材を面接で見極めることに難しさを感じていた。採用のミスマッチが起きる原因は、36%が「面接で相互理解ができていない」ことを挙げた。

面接だけでは「人材の見極め」は難しい

 選考過程で飲み会を開くなど、面接以外に候補者の人柄を探ろうと模索する企業はある。とはいえ多くの場合、そこまでの力は割けないだろう。人事や採用に関わる誰もが、支店長と同様の事態に直面する可能性がある。

酒乱商社マンに同僚が投げかけた“辛辣な言葉”

 東京地裁は22年9月の判決で、男性の酒席での発言を「職場の秩序を乱す悪質な言動」と重く見た。社会人としての礼節などの欠如を会社側は「内定段階では知り得なかった」として、内定取り消しは有効と結論付けた。

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 裁判所は、飲酒は一連の失態を正当化する理由にならないと判断した。判決理由は飲酒の影響について「気が大きくなっていたことは否定できない」としつつ「営業職では会食の場でもコミュニケーション能力が求められ、飲み会でこのような言動に及んだこと自体問題だ」と指弾。男性は控訴したが東京高裁も結論を維持し、判決は確定した。

 男性は内定を取り消されたことで自信を喪失し、しばらく就職活動もままならなかったという。別の会社でM&A(合併・買収)に関する仕事に就いた後も「今もこの会社に勤めたい」との思いを抱いて訴訟に臨んできた。ただ、歓迎会に同席した別の社員は陳述書で「このような人が入社してこなくて本当によかったと安堵している」と厳しい言葉を投げかけた。

 一度なくした信頼は簡単には取り戻せない。「酒は飲んでも飲まれるな」。酒席について回る常とう句を社会人としていま一度、心の中で唱えておきたい。

次の記事に続く 「バカなの?」「育て方、下手ですよね」社員同士の“グチDM”が会社にバレて…裁判所が下した“意外過ぎる判決”