「だまされない」は誰の叫び?
産経新聞は拉致問題に関して一貫して声を大にして報じてきた新聞である。他紙では報道されていない時代から報道してきた。私もよく覚えている。新聞によってこんなに拉致報道の差があるのか?と当時思いながら読んだ。
そのあと北朝鮮が拉致を認めて産経の報道どおりになったが、しかし、北がのらりくらりする事態は今も続く。
なので「私は だまされない」という見出しは安倍首相の言葉でありつつ、産経自身の叫びと言ってもいいだろう。この1面の読みどころはそこである。
では首相が日朝会談の「日程」に慎重になっているのは「北朝鮮にだまされないため」なのか?
読み比べて分かった「政治カレンダー」の存在
ここで読売と朝日の記事を読むと政治カレンダーがからんできた。それは9月末におこなわれる自民党の総裁選だ。俄然政局がらみの案件となるのである。
まず読売。
「『日朝』模索に期待と懸念」(6月15日)
小見出しにはズバリ「成否 総裁選に影響」。
日朝会談が9月の総裁選の前に行われた場合、その成否が総裁選に影響しかねないので期待と懸念が交錯していると書く。
停滞してきた日朝関係に首相が風穴を開ければ「3選の流れはさらに確固たるものになる」(細田派幹部)が、
「一方で、金正恩氏との会談実現に向けた首相の積極姿勢を危ぶむ見方も少なくない。北朝鮮に足元を見られ、会談の成果が乏しくなれば、世論の批判を受けるだけでなく、党内で求心力が低下する可能性もあるためだ。」
注目したいのは「北朝鮮に足元をみられ」という言葉がここにも出てきたこと。
首相は拉致被害者家族会との面会で「首脳会談をこちらがやりたいといえば、足元を見られる」と述べた(前出の産経記事)。
しかし北朝鮮に足元を見られることは拉致問題の解決だけでなく、自身の「総裁選」にそのまま影響があることも首相は警戒している。そんな行間が産経と読売の記事の読み比べでみえてくるのだ。