心を救ってくれたのは、「自然の存在」

 2009年12月24日に、大腸の内視鏡検査を受けました。定期検診で便に潜血が見つかったからです。内視鏡で腸管内を見ていくと、キノコ状のポリープがあらわれました。病理検査を行うために、内視鏡でポリープの一部を採取。生検の結果は正月明けに聞かされることになりました。

「ガンだったらどうしよう?」。人の命に限りがあることは百も承知でしたが、いざその現実を突きつけられたとき、自分でも驚くほどうろたえました。

 若いときから命がけの登山やカヌーに挑んできたのに、これほど取り乱すとは思いませんでした。

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 1月5日に生検の結果を知らされました。

 大腸ガンでした。心が押しつぶされそうになりました。

 手術は1月28 日に決まりました。先生は「初期のガンなのでリンパ節への転移はない」と説明してくれましたが、悪い想像ばかり膨らんでいきました。

「62歳まで好きなことをやらせてもらえたのだから、たとえここで死ぬことになっても、幸せな人生だったのではないか……」

 そんなことを考え、死に対する心の折り合いをつけようとしました。

 生と死の狭間で揺れる私の心を救ってくれたのが、「自然の存在」でした。

 山の中を歩いているとき。新幹線の車窓から富士山が見えたとき。自然に触れたとき、心に絡みついていた恐怖心がスーッとなくなっていきました。そして「今の自分」「今の状況」を受け入れることができたのです。

 それは、理屈では説明できない穏やかな感覚でした。

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