「そもそも今回の分裂劇は、高山のカシラが恐喝事件で長期間服役している間に起きている。組織を割った井上らも、当然『高山不在』の期間を狙って神戸山口組を旗揚げした。それだけに高山としては、自分が捕まったことで分裂の事態を招いたと自責の念があるのだろう。今回の宣誓書に親分の司の名前ではなく高山の名前があるのは、自分の責任で分裂を終結させるという意志を示したのではないか」
分裂した2015年の6代目山口組の構成員は約6000人、対する神戸山口組は約2800人だった。分裂の原因は高山らによる強権的な組織運営と、様々な名目の金銭の徴収だったとも言われ、その点について高山が責任を感じていてもおかしくない。
6代目山口組の構成員6000人対神戸山口組2800人で始まった抗争は、10年を経て6代目山口組が約3300人、神戸山口組が約120人と大きな勢力差が開くに至った。もう終わりにしよう、ということなのだろうか。
しかし、今回の宣誓書によって10年続いた抗争がすんなり終わるかは別問題である。
過去にも、対立抗争状態にある暴力団の双方がそろって抗争終結を宣言したり、もしくは劣勢に陥った側が組長の引退や組織の解散を警察に届け出ることはあった。しかし今回の場合は、6代目山口組の一方的な“終結宣言”で、神戸山口組からの反応はない。
警察当局の捜査幹部も「これでは手打ちになっていない。6代目(山口組)が抗争終結を宣言しても、『はい、そうですか』という訳にはいかない」と姿勢は厳しい。
終結宣言の目的は「厳しい規制の解除」?
この警察当局の幹部は終結宣言の目的について、「特定抗争指定暴力団の規制を解除してほしい、ということだろう」と話す。
特定抗争指定暴力団とは、指定暴力団同士が対立抗争状態にある場合に、その暴力団の主な活動拠点がある都道府県の公安委員会が指定するもので、指定されると様々な規制がかけられることになる。
警戒区域でおおむね5人以上で集まると中止命令などの行政手続きを経ずに即座に逮捕されるほか、事務所などの使用も禁止される。6代目山口組と神戸山口組は、抗争が激化した2020年1月に指定され、名古屋の弘道会の事務所などが立ち入り禁止となっている。
他にも双方の主な拠点がある神戸市や大阪市、名古屋市などに警戒区域が設定されており、6代目山口組が警戒区域外の静岡県内にある傘下組織の事務所で集会を開くことがあるのはこれが理由だ。
「特定抗争指定による厳しい規制を解除してほしいということだろうが、片方が抗争をやめますといっても、その実態を見極めるには時間が必要だ。当面は規制を続けることになるだろう」(前出の警察当局の幹部)

