イエローカードは出ても罰則が科された人はいない

だがそもそも、今年3月まで、イエローカードに当たる命令が出された釣り人はいても、2枚目が出されて罰則が科された釣り人はいないのだという。釣り団体の幹部はこう語る。

「昨年4月の4日までに、1人で4匹、計1.2トンのマグロを釣り上げ、飲食店に販売した釣り人がいたことがわかっている。いくら受け取ったかはわからないが、一度の違反判明なら命令のみ。アワビやナマコは一発アウトで3000万円以下の罰金が課されることと比べると、大違いだ」

釣り人任せの報告制で資源は守れるのか

水産庁では来年度から釣り人および遊漁船とプレジャーボート運航者に対する事前届け出制を導入する方針で調整を進めている。現状では、国内に遊漁船が約1万6000隻、プレジャーボートは数十万隻あるとされているが、そのうちどれくらいがマグロ釣りをしているのか、いまだ全体像が見えずにいる。「米国のようにマグロ釣りはライセンス制にして厳格に管理すべき」といった指摘もある。

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今は豊漁といっても、将来にわたって「海のダイヤ」を持続的に利用していくのなら、現状の釣り人任せの報告制ではクロマグロ資源に悪影響が出かねない。

4月に入って新ルールが適用されてからも、相変わらずマグロ釣りの人気は旺盛。すでに8日までに上限の5トンに近付き、9日から月末までは禁止となっている。「マグロがヒットした感覚が忘れられない」という太公望たちの楽しみを継続させるなら、漁業・遊漁が共存できる実効性あるルールを、速やかに導き出す必要がある。

川本 大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長
1967年、東京都生まれ。専修大学経済学部を卒業後、1991年に時事通信社に入社。水産部に配属後、東京・築地市場で市況情報などを配信。水産庁や東京都の市場当局、水産関係団体などを担当。2006~07年には『水産週報』編集長。2010~11年、水産庁の漁業多角化検討会委員。2014年7月に水産部長に就任した。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)、『美味しいサンマはなぜ消えたのか?』(文春新書)など。
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