1779年に獄中で非業の死を遂げたマルチクリエーターの元祖・平賀源内。作家の濱田浩一郎さんは「大河ドラマでも描かれたように、平賀源内は『解体新書』の杉田玄白と交流があった。小浜藩医という立場のある玄白は、科学者として自由に活動する源内をうらやましく思っていたのではないか」という――。

大河ドラマ「べらぼう」に高名な蘭学者・杉田玄白が登場

大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)において平賀源内は安田顕さんが演じており、初回から存在感のある演技で話題を集めています。そして同ドラマ第15話「死を呼ぶ手袋」では杉田玄白(演・山中聡)が初登場しました。

「杉田玄白像」(写真=早稲田大学図書館蔵/PD-Japan/Wikimedia Commons)

「困ったことに、エレキテルについてはイカサマじゃないとも言い切れないですからねぇ」
「(エレキテルが万病に効くというのは)源内さんがひねり出した売り文句ですよ。ちょいと大きく出すぎたかもしれませんねぇ……」

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そう言ってため息をつき、近ごろ奇行が目立つ源内を心配していた玄白。

玄白は江戸時代後期の蘭方医・蘭学者であり、前野良沢らとオランダの外科医書『ターヘル・アナトミア』を翻訳、安永3年(1774)に『解体新書』として刊行したことでよく知られた人物です。実はこの2人、諸書において「親友」とか「最も深い交りがあった」と記されるほど仲が良かったのでした。

マルチな活動家・源内、コツコツ努力する秀才・玄白

玄白は源内のことを「非常の人」と評しました。ここで言う非常とは日常的でないことを指します。確かに源内は日常的な平凡人ではなく、その言動は一般人の常識を超えていました。源内に付けることができる肩書は「本草学者、地質学者、蘭学者、殖産事業家、戯作者、浄瑠璃作者、俳人、蘭画家、発明家」など多岐にわたりますが、そのことを見ただけでも源内の常人には真似できない精力的な活動を窺うことができるでしょう。

源内はアクティブ、玄白は真面目でコツコツタイプの蘭学者と言ったイメージが強いと思われますが、2人はどのようなところで惹かれ合ったのでしょうか。その点に付いて記す前に玄白の前半生を簡単に見ておきましょう。