新函館北斗の「1度見たら忘れられない」像

 新幹線駅設置にあたっては、駅名を巡って一悶着があったことは有名な話だ。函館市は「新函館」がイチオシ。

 対して、駅の所在する北斗市は「北斗函館」を主張したという。その間を取って新函館北斗駅になった。こういう例は意外とあちこちにあるから、取り立てて珍しいエピソードでもない。

 

 ともあれ、農村の中の小駅は新幹線によって激変したというわけだ。120年の歴史の中で、新函館北斗駅時代はわずか10年足らず。その10年を持ち出して、思うように開発が進んでいないだとかケチをつけるのは、あまりにスジが悪いといったところだろうか。

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 最後に個人的なことを話すと、函館に行くときには新幹線を使うことが多いので、実はこの駅には何度も来ている。たいていはすぐに在来線に乗り継いでしまうが、一度だけ1時間ばかり乗り換えの待ち時間を過ごしたことがある。

 そのときは週末だったからか、駅前でイベントをやっていて地元の家族連れなども集まってきていた。よく覚えていないが、名の知れた団体がプロレスを披露していた。

 

 が、それよりも記憶に残っているのが、北斗市のゆるキャラ「ずーしーほっきー」だ。ときに二足歩行で歩き、ときに四つん這いで迫ってくる、そんな珍妙でキモくて愛らしい、インパクトバツグンのずーしーほっきー。彼が、家族連れの子どもにも容赦なく襲いかかっていたのをよく覚えている。

 
 
2016年3月、北海道新幹線開業カウントダウンセレモニーでの「ずーしーほっきー」(左)。北海道新幹線開業PRキャラクター「どこでもユキちゃん」と並び立つ ©︎時事通信社

 そんなずーしーほっきーさん、もちろん動く彼に会うことはレアな体験なのだろう。が、ちゃんと新函館北斗駅の駅前にはずーしーほっきーさんの像があります。ぜひ、ずーしーほっきーさんに会いに新函館北斗駅、行ってみてはいかが。 

写真=鼠入昌史

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