仮装身分捜査は、捜査員が犯罪の実行者の募集に応じて犯人に接触する際、架空の運転免許証や住民票等を提示して行う捜査活動のことである。

実施要領においては、対象となる犯罪を、インターネット等を通じて実行者の募集が行われていると認められる強盗、詐欺、窃盗、電子計算機使用詐欺等とし、「他の方法では犯人を検挙し、犯行を抑止することが困難と認められる場合に、相当と認められる限度において実施する」とされる。

仮装身分捜査は、警視総監や道府県警察本部長の指揮の下、あらかじめその承認を受けた「実施計画書」に基づいて捜査を実施。同計画書には「仮装身分捜査を実施することが必要かつ相当であると認める事由」「実施所属・従事体制」「実施期間」等を記載するとされる。

ADVERTISEMENT

これが有効打になるのか

これが「闇バイト」捜査の有効打になるのだろうか。

警察庁は「正当な業務による行為は罰しない」とする刑法35条規定を根拠として、違法にはならないと説明している。正当な業務のために身分証を偽造すること、公文書偽造にあたるも違法性が阻却されるとの立場をとっている。

これでは、捜査活動の一環であれば何をしてもいいという拡大解釈がなされかねないため、非常に問題があるという意見も根強い。

警察内部のルールのみで運用されることや、対象が市民活動の監視などにも及び、運用時の適用範囲が拡大解釈されるリスクもあるというのだ。

闇バイト実行犯の国選弁護経験がある弁護士で衆議院議員の藤原規眞氏は、2025年4月8日提出の質問主意書(質問第139号)において、「仮装身分捜査を、すべて任意捜査と捉えることには違和感を覚える」と述べている。

さらに筆者は、仮装身分捜査の法的議論に加えて、いくつかの問題点があると考える。

まず、警察の廉潔性の問題である。警察官が人を騙すということを業務として行うことで、適法捜査への国民の信頼が揺らぐ可能性が懸念される。仮装身分捜査が令状主義の例外となるならば、裁判所によるスクリーニング、いわゆる司法による統制が不可欠ではなかろうか。