なぜ「闇バイト」応募者は海外に行くのか
次に、仮装身分捜査に携わる捜査官は、捜査期間中、配偶者をはじめ、親兄弟や友人等との接触を断たれ、公私共に別人格の人間として生活しなければならない。つまり、捜査官に選任された警察官は、意図的に社会的孤立を余儀なくされるので、過度な心理的負担を負うことは想像に難くない。
さらに、仮装身分捜査が実施されると、闇バイトのリクルーターも慎重になる。闇バイトなどの犯罪勧誘が巧妙化する可能性がある。
2024年からタイミーなど短期バイトを募集するサイトには「深夜の猫探し」という投稿が出現した。猫はレクサスなどの高級車を指し、強盗の下見だったことが指摘されている。
こうした例がこれ以上に増えるかもしれないのだ。
台湾では、高収入求人、観光、展示会、海外移住などの名目で、騙されてミャンマーなどの詐欺拠点に連れて行かれる人が数十万人にのぼるという。これだけの人数が騙されたのは、台湾での勧誘が非常に巧妙であることの証左だろう。
ちなみに、ミャンマーの詐欺拠点には日本人もいたことが報じられている。
なぜ闇バイトから海外に行くのかと思うかもしれないが、闇バイトは、一度関与してしまうと抜け出すのが極めて難しい。応募の際に免許証や住民票の画像の送付をするなどで個人情報が相手に知られる。相手からは執拗に脅され、辞めたくてもやめられない。挙句、海外へと送られてしまうことになる。
筆者がこれだけ警戒感を強くしているのは、闇バイトの危険性が、新たな局面を迎えているからだ。
ミャンマーの犯罪拠点で行われていること
国内の詐欺拠点への取り締りが厳しくなり、犯罪組織の一部は海外に拠点を構えるようになっている。中国人などによる特殊詐欺グループは、タイとミャンマーの国境地帯に特殊詐欺の拠点を構えている。
NHKによると「ミャンマー東部の国境付近では、4年前のクーデター以降、少数民族の武装勢力による支配地域が広がるなか、中国人などによる犯罪組織が詐欺拠点を相次いで設けているとみられています」(NHK「ミャンマーで日本人の男子高校生2人保護 特殊詐欺に加担か」2025年2月18日)という。