世界的ジャズピアニスト・山中千尋さんの最新アルバム「ユートピア」は、誰もが一度は聴いたことのあるクラシック曲を中心に編まれている。
「両親が大の音楽好きで、常に音楽が鳴っている家でしたが、今回は、私の身体に染み込んだクラシック音楽を素材に、ジャズでどこまで遠くに飛べるかに挑戦しました」
たとえば綺麗でかわいらしい「乙女の祈り」(テクラ・バダジェフスカ)は、転調されたスリリングな曲に仕上がっている。優雅な「白鳥」(サン=サーンス)も、ドラムスが賑やかな曲にアレンジした。
「最近の“乙女”は元気ですから、私のパッションの赴くままに弾けるようにしました。『白鳥』は母の故郷の福島の阿武隈川で見た、餌をあげようとすると突っ込んでくる、図々しいイメージ(笑)。変拍子で攻撃的にしました」
ガーシュウィンやバーンスタインなどの、ジャズとクラシックの両面に軸足を持つ20世紀の新しい作曲家の作品も積極的に選曲した。
「尊敬する演奏家、フリードリヒ・グルダのように、私も誰も聴いたことのない表現を極めたい、そこを“ユートピア”にしたいと思っています。そして願わくば、聴く方にとっても、音楽こそが理想郷であって欲しいですね」
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最新アルバム「ユートピア」
好評発売中
http://www.chihiroyamanaka.com/