まるで海底神殿のような店舗に

 アンコール・トム風のデザインで進めることが決まった後に気になったのは、「水槽とアンコール・トムをどのように一体化させたらいいのか?」ということでした。私の頭の中で、その二つが一体感を持って、一つのデザインに収れんされなかったのです。

 あれこれ考えるうちに、ふとひらめいたのが「海底神殿が浮き上がってきた」というストーリーでした。

 古代文明が、深い海の底に沈み、遺跡と化した。そして何百年、何千年の時を超えて、朽ち果てた過去の遺跡が、何らかの拍子に浮上してきた……。そんなファンタジーを空想したのです。この空想にリアリティを持たせるために、アンコール・トム風の壁には、エイジング加工を施しました。また、古びた雰囲気をまとわせた本物のフジツボやサンゴ、ボロボロにした木片、水草なども貼り付けて、海底神殿さながらの雰囲気を演出しました。

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さながら海底神殿のような一角がある梅田本店

 壁の造形とエイジングのクオリティが低いと、このアイデアは一気に陳腐化してしまうため、現場での打ち合わせの後には、京都にあったFRP工場へと足を運び、入念にチェックをしながら制作を進めました。

 この顔は、30分に一回、目が開き、ウーッとうなりながら、鼻から煙が出るという一風変わった仕掛けも搭載しています。それを見られた人は「ちょっとラッキー♪」という、観光地にありそうな話題作りを狙ってのものです。

 おかげさまで、梅田本店も2012年のオープン以後、多くのお客さまに愛される店舗の一つになっています。

次の記事に続く 店舗外観に「ドンキイエロー」が使えない、それでも目立ちたい…ドン・キホーテが景観に厳しい京都で見せた“奇手”

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