くも膜下出血により昏倒して絶命か

 死体の「検案」は、医師が死因や死亡時刻を調べる作業をいう。尼崎市の医師が、5月8日付の「死体検案書」を記していた。

・氏名:不詳。女。75才ぐらい

・死亡したとき:令和2年4月上旬頃

・死亡したところ:尼崎市の錦江荘2階

・死亡の原因:くも膜下出血

・発病(発症)又は受傷から死亡までの期間:短時間

・手術:無

・解剖:無

・死因の種類:病死及び自然死

 医師の所見によれば、死因に不可解なところはないというわけだ。くも膜下出血というと、長時間労働による過労死などでもよく聞く症状で、いわば突然死に近い。女性はあるとき不意に、進行していたくも膜下出血により昏倒(こんとう)し、そのまま玄関先で絶命したのだろう。本人が死期を予期できたかどうかはわからない。

 遺体の発見状況はどうだったのだろうか。尼崎東警察署は以下のように説明している。

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「いつもすぐに郵便物を取り込んでいるのに、ここ2、3日、変死人の郵便受けに郵便物が溜(た)まっていることを心配した住人からの連絡を受け、家主が仲介不動産業者に連絡。玄関ドアに施錠があったことから、変死人宅に声掛けするも応答がなく、当署に通報があり、警察官立会の下、家主が管理する玄関伴で解錠し、更に内伴がされていたことから救急隊が損壊し、屋内を確認したところ、玄関先において左横臥に倒れ絶命する変死人を発見した」

身長133センチ、年齢は75歳くらい、右手指すべて欠損

 女性は運良く、亡くなってから割合早い時期に発見されたとみるべきだろう。もし住人が気づかなかった場合、大家が家賃を催促するまで発見されずに、遺体の腐敗が進行した可能性がある。

 なお、発見時の身長は約133センチメートルで中肉、年齢は75歳くらいで、右手指すべて欠損(労災によるもの)とされていた。着ていたのは緑色の長袖トレーナーとステテコ、ショーツ。身長などは官報に記載された情報と同じだ。

実際の官報の記事。画像の一部を加工しています(『ある行旅死亡人の物語』より)

 やはり、妙に小さいのが気にかかる。年齢に関しては「75歳くらい」とピンポイントで特定されているのが不思議だったが、これは遺品中の年金手帳を見ることで理由がわかった。

 手帳は表紙がオレンジ色で、かつて厚生労働省に存在した社会保険庁が発行したものだ(同庁は廃止され、現在は日本年金機構が引き継いでいる)。「平成元年(1989年)2月1日」に保険者となったとあり、そこでの彼女の氏名は「田中千津子」、生年月日は「昭和20年(1945年)9月17日」とされている。2020年4月段階で、年齢は74歳となる。