東京で不動産価格の高騰が続く中、鉄道各社が大規模な不動産開発に力を入れている。東急の堀江正博社長とJR東日本の喜㔟陽一社長が「文藝春秋」6月号(及び「文藝春秋PLUS」)で対談。東京の魅力や国際競争力をさらに高めるために必要な施策について語り合った。

対談は渋谷スクランブルスクエアの会議室で行われた ©︎文藝春秋

不動産開発は「今が踏ん張りどころ」

 コロナ禍に伴うリモートワークの普及などで大打撃を受けた鉄道事業。いま、両社ともに不動産を含む非鉄道事業に力を入れている。JR東日本は3月27日に6000億円を投じる「TAKANAWA GATEWAY CITY」(高輪ゲートウェイシティ)をまちびらき。東急も渋谷・東急百貨店本店の跡地に地上34階建ての大規模複合施設を建設中だ。

高輪ゲートウェイシティ ©︎共同通信社
高輪ゲートウェイシティのまちびらき ©︎時事通信社

 一方で、大型開発のネックとなっているのが、人件費や資材費を含めた建設費の高騰である。この影響について、堀江氏は「コスト増がプロジェクト収支に大きなインパクトを与えることは間違いありません」としつつ、こう語った。

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東急・堀江社長 ©︎文藝春秋

「ただ、私は今が踏ん張りどころだと思っているんです。例えば、中野サンプラザ跡地の再開発が資材費の高騰でストップしたように、今後もそういうケースは増えていくでしょう。すると結果として需給は逼迫していく。ここは歯を食いしばって、シェアを取りにいく局面だと考えています」

 喜㔟氏も「まったく同感ですね」としたうえで、個別のセグメントの収益だけを考えていては駄目だと指摘した。

JR東日本・喜㔟社長 ©︎文藝春秋

「私は、プロジェクト単独で考えるのではなく、鉄道事業との相乗効果も含めてプロジェクト判断をするべきだと考えています。高輪ゲートウェイ駅は、まちが開業する前の乗降客数は1日2万人弱でしたが、フルオープンすれば、24、25万人と10倍以上になることが見込まれる。さらに言えば、駅とオフィスビルが直結することで、賃料は周辺相場の1.5倍ほどに価値が上がります」