藤井聡太名人に永瀬拓矢九段が挑戦する第83期名人戦七番勝負(主催:毎日新聞社・朝日新聞社・日本将棋連盟、協賛:大和証券グループ)は、第2局が4月29日から30日にかけて、東京都大田区「羽田空港第1ターミナル」で行われた。

藤井聡太名人

さあ決戦だと控室が活気づく

 夕休憩からの再開後、永瀬は敵陣深くに角を打ち込んだ。ここまで藤井が嫌がる展開になっている。

 藤井は大駒の働きと玉の広さを重視している。だから動くマス目が多い4六の角や、下段飛車を好むのだ。ところが飛車は2六に吊り出されて働きが悪くなり、玉の逃げ場も1ヶ所しかない。モニターに映る対局姿からも藤井が苦しんでいるのがわかる。

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 控室では永瀬が大技をかける手を深く調べており、回避するために千日手に逃げるか、という話になった。ただし、その手順は超難解だ。「一手一手が難しすぎる」と阿久津が言えば、佐藤もうなずきながら「見えづらい手を拾っていかなくてはいけないですね」とつぶやく。

控室のモニターに映る対局の様子

 永瀬が7筋の歩を取り込めば、藤井は46分と終盤にしては長考で歩を打つ。そして打った歩を成り捨てて、形を乱してから桂を銀で取る。控室の予想とは違う進行にはなったが、さあ決戦だと控室が活気づく。

永瀬の「負けない将棋」に皆が感嘆した

 だが、まったく予想しない手を永瀬が指した。8筋に歩を打ち、玉頭に手をつける。ええっとどよめく控室。「すべてが外れますね」と広瀬が頭をかく。

 藤井は取られそうな銀で7六の歩を取りながら逃げた。さらにその銀が玉頭を守っている。永瀬は銀を取り損ねて、さらに桂と垂れ歩の2つも食い逃げされていいのか?