「すごく怖かった」密室で行われた取り調べ
よほどのショックを受けたのだろう。この事件が発覚した翌朝、送迎を担当したパート職員も、かっちゃんの様子をこう口にしている。
「僕が送迎車で迎えに行っても、勝見さん(かっちゃん)、落ち込んだままでねぇ。『車に乗りたくない』『T作業所に行きたくない』ってごねていました。いつもは何かあっても、翌日にはケロッとしていますが、このときは相当な落ち込みようでした」
密室でいったい何が行なわれていたのか。それを知るのは、かっちゃんと3人の男性社員しかいない。
私がその密室の出来事の一端を知ったのは、かなり後になってからである。情報源は快活さを取り戻した当のかっちゃんだった。
「すごく怖かった」と、かっちゃんは打ち明けた。
「密室に呼ばれて、施設長とJさん、それにEさんの3人に囲まれたんだ。3人とも僕よりずいぶん若いし、力もあるからね。Jさんは体が大きいし、施設長なんか格闘技をやっていたから特に怖い。だから、僕、逃げようとしたんだ。
そしたら、『まだ聞きたいことがある!』って、3人に一斉に体を押さえつけられて。足蹴っ飛ばされたり、腕ねじ上げられたり、腕や胴体を強く握られたりして……。だから、僕『痛いよう!』って叫んだんだ。それでもやめてくれなくて、とうとうパニックになっちゃって。自傷行為なんてしたことないけど、自分の頭をドンドン壁に打ち付けたんだよ。
3人が部屋を出て行った後は、僕、一人で部屋でずっと泣いていた。だって、あんな怖い想いしたんだし、体が痛くてしかたがなかったんだから。体中がアザだらけになったよ。その日は歩くのも大変だったし、体が痛くて風呂にも入れなかった」
「体中がアザだらけになった」は本当なのか
大の男3人(Eさんはまもなく退社した)に密室に連れ込まれ、「悪事」に対する集団的な恫喝に晒される。「悪事を働いた」という負い目がある分、これだけでも恐怖心が煽られるには十分である。その上、集団的な暴行を加えられるとなれば、パニックに陥るのも無理はない。
私をT作業所にスカウトしたパート職員のIさんによると、この3人の男性社員の集団暴行があったとされる日、ミーティングルームからこんな施設長の怒声が聞こえてきたという。
「お前、これは犯罪だぞ! わかってんのか!」
かっちゃんが密室内で3人の男性社員に囲まれ、集団的な恫喝を受けたことだけは間違いないのだろう。
では、職員の集団暴行を受けて「体中がアザだらけになった」というかっちゃんの訴えは、はたして本当だったのか。