1対1の引き分けだ。が、ここで推理をググッと勝手に進めて、結論を書こう。

その3 脚本家の中園ミホさんにとって、「あんぱん」は2作目。だから、豪は帰ってくる。

全然わからない、というオールジャパンの皆さま、すみません。説明してまいります。

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“花子の幸運ぶり”が解せなかった

中園さんは「あんぱん」の前に、「花子とアン」(2014年度前期)を書いている。『赤毛のアン』の翻訳者である村岡花子をモデルにしたドラマだ。『赤毛のアン』の日本における人気は本国・カナダ以上と言われている。

中園さんは「アン大好き元少女」を主たる視聴者と見定めたに違いなく、ヒロイン・花子(吉高由里子)はアンを重ねた人物像にしていた。ファンはうれしかったに違いないが、解せなかったのが花子の突出した幸運ぶりだった。

兄1人と妹2人の4人きょうだいの中で、本が大好きだった幼い花子を父が東京の女学校に送り込み、そこで花子は英語を身につけた。ところが残り3人といえば、兄(賀来賢人)は奉公に出て、上の妹・かよ(黒木華)は製糸工場へ行き、下の妹・もも(土屋太鳳)は北海道の開拓民のところに嫁ぐ。2人ともとんでもなく過酷な環境に置かれ、共に逃げ出してくるのだ。

一方、花子は夫との結婚でも“幸運力”を発揮する。妻帯者(鈴木亮平)をそうとは知らず好きになるが、妻(中村ゆり)の方から離婚を申し出てくる。しかも妻はそれから間もなく亡くなり、晴れて2人は結婚する。って、花子の独り勝ちにもほどがある。

「単独の幸運は避ける」と肝に銘じているはず

と思ったのは私だけではなかったはず(たぶん)で、「花子とアン」は期間平均視聴率が22.6%と高かったわりには「傑作ドラマ」として語られることはあまりない。そしてこのことを、「ハケンの品格」に「ドクターX」など大ヒットメーカーの中園さんが意識していないはずがない。ヒロインのみの突出した幸運、幸福は避ける。そう肝に銘じているはずだ。