学校へ行けなくなった中川の「心の支え」

 同時期には、靴を隠されて家に帰れず、思い切って担任の教師に訴えたところ代わりの靴を渡され、やっと帰れたことがあった。中川は担任の優しさに感激し、きっと犯人グループにも注意してくれると期待した。が、その担任から後日、靴代を請求され、しかもいじめた側には何も対処してくれなかった。それまでどうにか堪えて学校を休まずにきた彼女だが、このできごとですっかり心が砕け散り、それからというもの卒業するまで学校に行かなくなってしまう。

 そんな彼女の、常に心の支えとなっていたのが、オタク趣味だった。先述した修学旅行で暴言を吐かれたときは、ショックで絵を描くのをやめてしまおうかとも考えたが、大好きなことをやめてしまったら「わたし」は「わたし」でなくなってしまうと思い直す(中川翔子『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』文藝春秋、2019年)。不登校中には、楳図かずおの『漂流教室』をひたすら模写していたという。

『「死ぬんじゃねーぞ!!」 いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文藝春秋、2019年)

ジャッキー・チェンの事務所へ入所、ミスマガジンで本格デビュー

 芸能活動は雑誌のモデルの仕事を何回かやったあと、少しあいだが空いた。この間、通信制の高校に進学後、中学の頃より憧れていた戦隊物のヒロインの俳優が水着でグラビアに出ていたことから、グラビアアイドルにも興味が広がり、写真集やDVDを集めては研究を重ねる。

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《私もグラビアアイドルになったら人生楽しくなるかもしれないと、お化粧に目覚めてまつげの角度、ピアスの位置とか全部真似して、世界が急にメキメキしてきて。たまたま母の知り合いにジャッキー・チェンの事務所[引用者注:日本支部]の方がいて、そこに入ったんです》(『週刊文春』前掲号)

 しかし、事務所では仕事よりレッスンを受けるのが主だったため、水着を着てグラビアに出たかった中川は自らグラビアアイドルの登竜門と目されていたコミック誌主催のコンテスト「ミスマガジン」に応募し、見事「ミス週刊少年マガジン」に選ばれた。

©︎文藝春秋

 戦隊物好きがきっかけで、ジャッキー・チェンの事務所へ、さらにミスマガジンで本格デビューという展開はなかなかドラマチックだ。ただ、その事務所は直後に閉鎖され、中川はワタナベエンターテインメントへと移籍する。