ライブのMCも全部台本があったんです。それに対して「何これ」って思いながらステージでその通り話すんですけど、そうするとファンの方はきちんと笑顔になってくれるんですよ。だから徐々に気づくんですね。「大人たちが言っていることって、今私ができないことだから、助言してくれてるんだ」って。

 でも、気づくまでがめちゃくちゃしんどかったです。なんでこんな決められたことを喋んなきゃいけないのって。

©志水隆/文藝春秋

 それこそ髪型一つにしても金髪にしたり、エクステをつけたり自由にしていたのに、芸能人になってからは「美容室はここです。切るのはこの人。毎月ここに行ってください」って全部決まっている。それがしんどいんです。ずっと監視されているみたいで。

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 ストレスを発散する場所もなくて。20歳までは外で遊べなかったので、例えば地方のロケ先に行ってもホテルからは出ちゃダメで。20歳を過ぎて、やっとお酒を飲んでいいとなってから、少しずつ発散できるようになりましたね。

――お話を聞いていると芸能界ではつらいことの方が多かったようですが、逆に楽しいことはなんだったんですか。

時東 それがテレビのカメラの前やステージの上は超楽しいんですよ。ステージでみんなに見てもらうとか、みんながキャーッて言ってくれることで最高にストレスの発散ができてたんです。握手をすることも、幸せでした。サインを大量にするのもとにかく幸せでした。

アイドルコスチューム姿の時東さん 本人インスタグラムより

 ただただ、裏で縛られてることがとても苦しかったっていう。私は表が何も苦しくなかったので、それは良かったと思います。

自分自身で物事を決めたり自由にしゃべってみたかった

――時東さんはもともと芸能の仕事をやりたかった訳ではないですが、芸能界でやりたいことはあったんですか。

時東 芸能界でこれをやりたいとかはなかったんです。当時インタビューで「今何が欲しいですか?」って質問されて「自由です」って言っちゃうくらい、めっちゃ追い込まれていたので(苦笑)。

 ライブのセットリストを自分で決めてみたいな、ラジオの選曲を自分でしてみたいなとかそういう小さいことがやりたいことでした。あとは、もっと自由に喋ってみたいなとか。

 恋愛トークは事務所NGだけど、「今日は恋愛の話だから頑張ってごらん」って言われる時があったんですね。だから「友達から聞いたんですけど」と前置きして話してました。でも、今よく考えたらそれで話すのが上手になったと思うんですね。人を悲しませずに楽しませるっていう方法を学んだなと思います。