6月19日、学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長がついに記者会見を開いた。加計氏が公の前に登場するのは、獣医学部新設をめぐる疑惑が浮上してから初めてのこと。しかし、大阪北部地震の翌日、岡山でいきなり記者会見を行うという手法に批判が集中した。加計氏が会見で語ったことを、関連する発言とまじえて紹介する。

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加計孝太郎 加計学園理事長
「3年も前のことなので、記憶にもないし、記録にもなかった」

共同通信 6月19日

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「総理のご意向」文書の存在が明らかになってから1年あまり。加計学園の加計孝太郎理事長が初めての記者会見を開いた。

 加計氏は安倍晋三首相と学生時代からの「腹心の友」。過去、安倍首相が「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」と発言していたこともある(『週刊文春』2017年4月27日号)。加計学園が愛媛県今治市に新設した岡山理科大学の獣医学部には、37億円相当の市有地が無償譲渡され、事業費の半額にあたる最大96億円を県と市が負担する。

加計孝太郎 加計学園理事長 ©共同通信社

 安倍首相は獣医学部新設計画を初めて知ったのは、学園が国家戦略特区の事業者に選定された「17年1月20日」と国会で答弁していたが、愛媛県の文書には2015年2月25日に加計氏と安倍首相が面会し、首相が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたと記されていた。

 しかし、5月22日、安倍首相は国会で加計氏との面会を否定。それを追うように加計学園は5月26日、面会は架空だったとのコメントを発表した。5月31日、加計学園の渡辺良人事務局長が虚偽を伝えたとして愛媛県庁を訪れて謝罪を行っている。

 19日の会見で加計氏は、学園職員による「不適切な言動」について謝罪。渡辺事務局長を減給10%(6カ月)の懲戒処分、自身も給与10%を12カ月分自主返納すると発表した。加計氏は渡辺氏が面会を持ち出した理由について、「事を前に進めようとして言ったとの報告を受けている」と説明し(朝日新聞デジタル 6月20日)、渡辺氏が勝手にやったとの認識を示した。

 愛媛県の文書に記されていた安倍首相との面会については、「記憶にもないし、記録にもなかった」と全面否定。自身の渡辺氏への指示も否定した。記憶も記録もないということは、根拠もないということだ。

加計孝太郎 加計学園理事長
「何十年の友だが、基本的に仕事のことは話すのはやめようと(決めていた)。こちらの話はしないし、獣医学部の話はしていない」

ロイター 6月19日

 会見で加計氏は獣医学部の設置について、安倍首相とは認可が降りるまで話したことはないと断言した。加計氏と首相は13~16年だけで20回近くゴルフや会食を重ねており、安倍昭恵首相夫人が両者の写った写真を「男たちの悪だくみ」と題して投稿したのもこの頃だ(2015年12月24日)。だが、この間、獣医学部新設についての話は一切出なかったという。安倍首相は加計氏との交流について「何回も会って会話をするが、彼の仕事についての話はしない」と明言しており、2人の息はぴったりだ(ロイター 5月14日)。

安倍晋三首相 ©文藝春秋

 しかし、安倍首相は2017年7月24日の衆院予算委員会で、「彼(加計氏)はチャレンジ精神を持った人物であり、時代のニーズに合わせて新しい学部や学科の新設に挑戦していきたいという趣旨のお話は聞いたことがございます」と発言していた。十分仕事の話をしていると思うのだが? 「新しい学部や学科の新設」は加計氏の仕事ではないの?