碧子さんが離婚できなかったのは、祖母や母親の「結婚観」が深く根付いていたことも理由の一つであることは確かだが、筆者は共依存もあったのではないかと考える。

 共依存とは、自分と特定の相手が互いに過剰に依存し合い、その関係性に囚われている状態を指す。

「離婚しない」と頑なになっていた碧子さんや母親、祖母は、相手との関係が途絶えることを恐れ、相手の行動や問題を自分の責任として捉え、自分を犠牲にしてでも婚姻関係を継続したいように感じたのではないか。

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 このことを碧子さんに伝えると、こう答えた。

「そうですね、私は元夫に依存していました。今でも今の夫に依存していると感じることが多々あります。以前は『誰か(夫)が私を幸せにしてくれる』という考えが根本にありました。『結婚していないと』『夫がいないと』=『私は不幸になる』という認知があり、それにしがみついていたのです」

 碧子さんは、「THE九州男児」の父親から暴力や暴言などの虐待を受けていた。にもかかわらず、母親や祖母など、身近な親しい大人から庇ってもらえることは少なかった。しかも父親の虐待は碧子さんに対してのみで、妹にはなかったという。

「父にとっては、いつでも自分が正しく、他人は間違っていました。正しい自分の話をなぜ周りは聞かないのか……。そういう憤りが、強い言葉使いによる他人へのコントロールにつながっていたのだと思います。そんな中、私は真っ向から父に反抗する性格だったため、父は私の中に、父自身の姿を投影したのかもしれません。妹はそんな姉を見ながら育ち、上手に立ち回っていたため、父に虐待される対象にはならなかったのだと思います」

 碧子さんの大人への不信感や自己肯定感の低さは、このために培われたのだと想像する。中学3年生の時に不登校になり、家出をした時は、自己肯定感の低さゆえに自分を大切にできず、自暴自棄になり、明け方まで公園で過ごしたこともあった。