「この人とはもう、一緒にはいられない」

 2022年5月。33歳の碧子さんは、夫に誘われてイタリアンレストランに来ていた。

 しかし自分でも不思議なほどテンションが上がらない。お酒が好きな碧子さんだが、その日はノンアルコールドリンクを選択していた。

 そして飲み物が供されると、2人で乾杯する。

ADVERTISEMENT

 次の瞬間、碧子さんは無意識にこう口にしていた。

「私、あなたともう、一緒にいられるかわからない」

 そう口にした碧子さんは、自分の心の中にあるモヤモヤが明確になった気がした。「この人とはもう、一緒にはいられない」という言葉が浮かび、これまでと一転、「離婚」という決断がすうっと自分に馴染んだのだ。

「私は今まで、夫婦仲が改善しない原因は、外面では夫のせいにして、夫にも『お前のせいだ』って言っていましたが、本当はずっと『自分が悪いんだ』『私の努力が足りないからだ』って自分のことを責めて、すごく苦しんでいました。でも、風俗や不倫など、度重なる夫の女性遊びに直面してきて、やっと『これは彼自身の問題だ』ということが分かったのです」

 なんと夫は別居婚生活の間にまた「独身」と偽り、マッチングアプリに登録していたのだ。

 碧子さんは彼を尊敬していた。結婚してからは、碧子さんが長年どう接して良いかわからなかった父親との間に立ち、仲を取り持ってくれた。彼に対して、心から感謝していたし、家族にも友人にも自慢の夫だった。だから「自分が悪い」と考え、自分を変える努力をしてきた。

 しかし結婚してから約7年。自分を変える努力の結果、「自分を責める自分」を否定できるようになっていた。

「女性問題が発覚するたび、何度も自分自身に『この人でいいの?』って問いかけてきましたが、いつも『この人を選んだのは私だから、私の選択を正解にしなくては』という気持ちがありました。でももう、彼を選び続けることはできません。私が本当の意味で幸せになることの妨げになる夫なんて、私には必要ないと思いました」