現在69歳、ペルーで通算20年を過ごした

 教皇レオ14世の本名はロバート・フランシス・プレヴォスト。1955年9月14日、イリノイ州シカゴのサウスサイド地区で生まれている。3人兄弟の末子で、現在69歳。カトリック系の高校を経て同じくカトリック系の大学で数学を専攻したのち、神学校にて神学の修士号を取得。その時期、地元の高校で数学を教えることもしている。その後にローマの教皇庁大学にて教会法博士号を取得。

 1985年に宣教師としてペルーに赴き、以後、通算20年を過ごし、ペルーの市民権を取得してアメリカとの重国籍者となっている。英語、スペイン語、イタリア語を話す。2023年、生前の教皇フランシスコによってバチカン勤務を命じられ、枢機卿として世界中の司教を任命する任に就く。2025年5月の教皇選挙にて第267代教皇に選ばれ、レオ14世を名乗ることとなった。

レオ14世教皇 ©dpa/時事通信フォト

黒人のルーツを持つことが発覚

 教皇選挙の結果を知ったルイジアナ州ニューオーリンズのある歴史家は、教皇のプレヴォスト(Prevost)という姓がフランスに多いことから、ふと教皇の祖先を10~12世代ほど遡ればルイジアナに縁があるかもしれないと思って調査し、驚くべき事実を発見する。白人と思われていた教皇は、その祖父母がルイジアナ・クレオールだったのだ。

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 クレオールとは広義には白人と黒人の文化が混じり合ったさまざまなものを指すが、ルイジアナ・クレオールにはもう少し狭義の意味がある。現在のルイジアナ州は1803年に買収されるまでフランス領だったことからフランス系の白人が多く、加えて黒人(フランス領/植民地だったカリブ海の島経由)、さらに先住民やスペイン系もおり、混血も進んでいた。肌の色はさまざまだったが、こうした人々はルイジアナ・クレオールと呼ばれた。

©GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

 調査によると、教皇の母方の祖母はルイジアナ・クレオールであり、祖父はカリブ海のイスパニョーラ島(ハイチ/ドミニカ共和国)からの移民。当時、祖父母は国勢調査に「黒人」と記録されていた。祖父母はのちにシカゴに移り、1910年の国勢調査ではともに「白人」と記録されている。黒人差別が激しかった時代、肌の色が薄い黒人の中には差別を避けるために、状況が許せば出自を隠して白人として生きる道を選んだ人々がいる。これを「パッシング(passing)」という。

「ABC News」は「教皇レオ14世の家系図にはニューオーリンズの黒人のルーツが見られる」「記録によれば、アメリカ人初の教皇の祖父母は黒人だったことが判明」などとリポート

 教皇の母親は、この祖父母からシカゴで生まれ、長じてシカゴ生まれのイタリア系2世の男性(その父、教皇の祖父はイタリアのシシリー島からの移民)と結婚し、教皇を含む3人の男児を出産。教皇の長兄はこの件について取材され、「一家は黒人であるとは認識しておらず、クレオール系のルーツについて話したことは一度もない」と答えている。教皇と兄たちが家系についてどれほど知らされていたのかは不明ながら、教皇は母方と父方、双方の家系の詳細が報じられたのち、自身を「移民の子孫」と語っている。