教皇の「平和」を重要視した意見

 レオ14世の社会問題に対する意見は、あらゆることに非常に寛容かつ包摂的だった先代フランシスコに近いが、フランシスコに比べると中道寄りとされている。

 まず、何よりも「平和」を重要視し、ウクライナとガザの現状について繰り返し語っている。

 移民問題については、レオ14世が20年暮らしたペルーには多くのベネズエラ移民がおり、その苦境を長年にわたって見てきたことから、特に関心が強い。そこからトランプの移民政策への批判的な意見も出ている。

ADVERTISEMENT

 カトリック教会における女性の地位向上については、先代フランシスコが司教会議で女性に投票権を与えるなどした改革を評価し、それを引き継ぎながらも女性を司祭に任命することには反対している。

2019年11月、来日したフランシスコ・ローマ教皇(当時)と、出迎えられる天皇陛下 ©時事通信社

 気候変動については「言葉から行動へ」と、その危機感を認識。また、SNSを使いこなし、AIについてもこれからは必要なものとしている。バチカンとメディアの関係性も重要視しており、同時に「言葉」が武器にもなり得ると警告している。

 LGBTQ+については以前より保守的とされていたが、選挙後に行われたバチカン外交団との初会談で「家族は男と女の結びつきに基づいている」と語り、LGBTQ+の人々を落胆させた。ただし、先代フランシスコの影響もあってか、「単にライフスタイルを理由に人々を排除したくない」と、同性愛に対する自身のかつての考えをやや緩和させている。

 また、中絶と安楽死は現代社会の「使い捨て文化」の証拠であるとして、認めていない。

新教皇とアメリカの複雑な関係

 教皇とは全世界14億人のカトリック教徒とカトリック教会の頂点に立つ人物だが、信仰に基づきながらも信仰の枠を超えて世界を見る。加えてレオ14世はアメリカ人であることから、アメリカの政治や社会に自ずと強い関心を抱いている。多くのアメリカ人も同様に、自身と同じ国で生まれ育ち、同じ文化を共有し、同じ言葉を話すレオ14世に強い親しみと、精神的なリーダーとしての期待を寄せている。もちろん、すべてのアメリカ人が教皇のすべての意見に同意はできないにせよ。

2025年4月26日、バチカンで行われたフランシスコ教皇の葬儀に参列する信者たち ©dpa/時事通信フォト

 また、教皇の複雑な家系は、アメリカの移民の物語、人種の物語を象徴しているようにも映る。

「トランプとの対立」という煽りに教皇が乗ることはないだろう。ただ、祖国アメリカが大きく道を踏み外すようなことがあったとすれば、忌憚のない意見を発するのではないか。新教皇レオ14世とアメリカの関係は、非常に複雑かつ興味深いものになっていくと思われる。

次のページ 写真ページはこちら