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「仕事の時以外はキマってない時がなかった」
一恵は言う。
「こうして手に入れた金は、ほとんどっていうか、全部クスリにつかってたね。金を手にすればするだけ、クスリを買っちゃうの。仕事の時以外はキマってない時がなかったくらいだった。14歳の時からそうだったし、お母さんも含めて周りの人がみんなそうだったから、当たり前って感じだった」
覚醒剤づけの日々から一恵が脱したのは、17歳の時だった。1歳年上の男性との間に、子供ができたのだ。妊娠が判明した当初から、つわりが激しく何日も寝たきりになっているうちに、覚醒剤をやりたいという衝動が消え失せた。
その後、長男を出産、1年後には次男を妊娠した。この時も妊娠中のつわりや、育児の忙しさが重なって、自然と覚醒剤から距離を置いた。
図らずも、一恵は3年にわたって覚醒剤を止めることになったのだが、家庭が円満というわけではなかった。第2子の妊娠がわかった頃から、夫婦のいさかいが絶えなくなり、出産前には別居をしていた。産後も関係は修復できず、2歳児とゼロ歳児を抱えたまま離婚を決めた。
一恵は独力で2人の子供を育てるのは難しいと思い、母親の美奈子を頼った。以前には同居を拒まれていたが、他に頼る人がいなかったのだ。美奈子も再婚相手の文明も戸惑ったが、子連れの一恵を追い返すわけにもいかず受け入れた。
