「警察に追われることもある」義父との“グレーな商売”が意外な天職に
この頃、義父の文明は軽トラックを走らせて古紙回収業をして生計を立てていた。以前は、暴力団一本で生きていたが、70歳を迎えて代紋だけでは食べていけなくなったため、街で雑誌や新聞を集めて売る仕事をしていたのだ。文明の話では、年老いた構成員はシノギができなくなり、何かしらの仕事を持つのが普通なのだそうだ。
一恵は仕事に困っていたことから、文明の仕事を手伝って小遣い稼ぎをした。軽トラックの助手席にすわり、道端に置いてある古紙を片っ端から荷台に乗せていくのだ。キロ単位で買ってもらえるため、集めれば集めるだけ金になった。彼女はこの仕事を次のように説明する。
「古紙回収業って、食えないヤクザがやることも結構あるみたい。やってみて知ったんだけど、結構グレーな商売なんだよね。普通、新聞は正規の業者が回収に来るし、雑誌とかは資源ごみの日に回収って決まっているじゃん。だから、ヤクザが古紙回収業をやる場合って、正規の業者やごみ回収車が来る前に街を回ってそれを盗んで売るの。
同じようなことをしている業者って結構いるから、その日は真夜中から軽トラを走らせて集める。同業者と奪い合いになることもあれば、警察に見つかって追われることもある。結構スリルあるんだよね。でも、やればやるだけ儲かるっていうのは夢がある仕事だと思ったよ」
とはいえ、70歳の構成員と19歳のシングルマザーが手を組んでやったところで、大した額になるわけではない。子供たちが大きくなれば、今以上にお金がかかるのも明らかだ。
