ワンコインランチは残り続けたが……
ついに限界を迎えた2015年1月、投資ファンドのアスパラントがテラケンを買収。それを契機に不採算店舗を次々と閉めていった。その数は数十店舗に上った。
並行して商品価格の見直しを図り、380円を超えるメニューも出すように。冷凍の寿司ダネを使ってはいたが、刺身の盛り合わせもできた。
ただし、ワンコインランチをやめることはなかった。そのころには魚の仕入れ値も上がっていて、500円ではとても採算が取れる状況ではなかったが、さくら水産の“アイデンティティ”にこだわり続けた。
業績は回復することはなく、買収後のテラケンの2016年2月期決算は、売上高が75億7500万円、営業利益は1億6800万円の赤字となった。その後も、17年2月期は売上高が59億7900万円、営業利益は1億6600万円の赤字。18年2月期は売上高が52億3700万円、営業利益は2億6500万円の赤字と低迷した。
そして2019年5月には、再び親会社が代わり、大手外食チェーンの梅の花がテラケンの筆頭株主になったのである。
現在のテラケン社長である野田安秀氏は30年ほど梅の花グループで働いてきた外食業界のベテラン。買収した当時の状況を次のように振り返る。
「2019年には40店舗ぐらいありましたが、100人とか180人とか入るような昔ながらの大型店舗が多く、ランニングコストがかかりすぎていました。そうした店を中心に手を入れていきました」
「もう安売りでは限界が見えている」
さくら水産が進むべき方向は明白だった。
「もう安売りでは限界が見えている。どこかで事業転換しなければならない状態でした。梅の花は客単価で4000~5000円ほどでしたから、同じように量より質でお客さまに来てもらえる店にしていこうと舵を切りましたね」
すぐさま手をつけたのが昼のメニューだ。ファンドが買収してもやめられなかった“伏魔殿”のワンコインランチをついに廃止した。