次なる改革を検討していたとき、新型コロナウイルスがまん延し、店は休業を余儀なくされた。

「いきなりコロナが襲ってきたので、いろいろなことがペンディングになりました。なかなか営業ができない中で、ますます安売りでは無理だということになりました」

不幸中の幸いと言うべきか、コロナ禍で客がいないタイミングに20店舗近くを一気に閉店するとともに、事業変革を推進して、価格のアップに踏み切ったのだった。

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値段を上げたら客数は伸び、女性客も増えた

当然、ただ価格を上げればいいわけではない。どのようにして客を惹きつける工夫をしたのだろうか。野田社長は、結局のところは質の向上に尽きるという。

「メニューはすぐに高くできるわけですが、お客さまがついてくるかどうかは別問題。やはり提供する商品やサービスのクオリティを上げなくてはならないですよね。実は元々料理に使っている魚自体の質は悪くなかったので、表現の仕方をどう変えていくのかを考えました」

そこで魚の仕入れ方法などはそのままで、スペックを変えて、朝締めした魚や、冷凍ではなく生のマグロを取り入れるなど鮮度を最優先にした。そして、その取り組みを客に伝えるために、マグロの解体ショーや、スタッフによる来店客へのコミュニケーション強化などを図った。

現在のランチは「お刺身5点盛り定食」が1480円。それと並んで1150円の「生あじフライ定食」も人気。アジは冷凍を使うのではなく、店舗でさばき、パン粉をつけて一尾ずつ揚げている。タルタルソースも手作りだ。ここまで手間をかけるとオペレーションは煩雑になる。だからこそ、正規の価格にしなければならないと野田社長は訴える。

ワンコインランチの時代と比べて価格は倍以上になっているが、客数は伸びている。2023年から24年にかけては110%成長した。さらに客層にも変化が見られる。以前はほぼ男性客しかいなかったが、今は女性のグループ客も目立つようになった。