「女性が増えたことに加えて、談笑しながらゆっくりと食事をとられているのが印象的です。昔は着席してから“0分提供”といった形で回転させていたので、立ち食いそばのように掻き込んで食べている人たちばかりでした」(佐々木氏)
スタッフが創意工夫するように
商品やサービスの質向上によって、スタッフの仕事の自由度にも広がりが見られるようになった。
「今は仕入れによって毎日魚種が異なります。変な話、店長たちも何がくるかわからない。ですから、来た魚をどうやって売るかを考えて、どんな魚でも対応できる調理レベルにまで技術を磨いたり、お客さまが料理を楽しんでもらえるよう魚種を説明できるようにしたり。そういったことを店舗で徹底してくれています」(野田社長)
その中で1年ほど前に生まれたのが「裏メニュー」だ。仕入れた魚によって調理内容が変わるため、担当者の創意工夫で店独自の商品を出すようになった。
「冷凍を使っている店舗よりも大変でしょうけれど、自分で料理を考えたり、ある程度値付けにも裁量を持つことができたりする。自由度の広がりにやり甲斐を感じてくれているスタッフはいます」と野田社長は意気込む。
やる気があればアルバイトでも魚をさばいたりしている。誰もが活躍する機会が生まれているのだ。
課題は“安かろう悪かろう”のブランドイメージ
改めて振り返ってみて、“安売り路線”からの脱却をどう捉えているのだろうか。
「まずはランチメニューを変更しましたが、やはり怖かったですよね。店がほぼ変わっていない中で価格を上げるわけですから。客数は確かに半分ぐらいになりました。でも、良い商品を出し続けていることで、半分になった客数が6割、7割と戻ってきています。客単価は以前よりもボンと上がっているため、昼の売り上げはコロナ禍前よりも大きく上昇しました」
野田社長がそう説明すると、佐々木氏も続いた。
「(値上げするということで)最初はお客さまが来ないんじゃないかといった懸念もありましたが、実はメニューを変えたことでお客さまの反応は良くなりました。客数が減っても売り上げはガタ落ちせず、むしろ利益が出るようになりました。500円ランチの時はほぼ利益がなかったわけですから」