古代、大和詞(ことば)で“はし”とは「端」を意味していた。ものの縁(へり)を指すその言葉は、やがて端と端をつなぐ「橋」の意味をもつようになったという。橋は、そこから人をつなぎ、ふたつの世界をわたすものになったのだろう。
映画『明日にかける橋 1989年の想い出』も、静岡の田舎町に架かる橋を渡った主人公のみゆきが、様々な出会いを通して成長する物語。
主演は鈴木杏さんだ。
「1989年に高校生だったみゆきは、どう生きればいいのか分からず両親や弟とぶつかっていきます。そしてバブル崩壊とともに社会人になり、物事を諦めながら日々を送る大人になってしまいました」
だが、ある出来事をきっかけに、20年前の高校生の自分と遭遇することになる。現在と過去、ふたりをつないだのは、町を流れる川に古くから架かる板橋だった。
「子供の頃には気付かなかった両親の気持ちや、大人になって失ってしまった、何も恐れず考えるよりも動き出していた強さを、過去の自分から教えられたみゆきは変わっていくんです」
この映画は「町のために何かしたい」と考えた、静岡在住の3人の女性の思いが実った作品。袋井、磐田、森町の古い街並みや「ふくろい遠州の花火」と、地元では“なんでもないもの”がスクリーンを通して特別なものに生まれ変わった。映画もまた、人や世界をつなぐ橋になったのだ。
INFORMATION
『明日にかける橋 1989年の想い出』
6月30日より有楽町スバル座ほか、全国順次公開
http://asunikakeruhashi.com/