この最新機器、3年間のリース料は1台1億円。オーナーの孫正義からは「チームが強くなるためのコストはすべてかけなさい」という大号令が下りており、まだ世界中でも40台程度しかないというマシンだが「そんなにいいのなら、10台置きなさい」とまで言ったというから、その躊躇のない大胆な決断には、ただただ驚かされるばかりだ。

孫正義

「監督、全部見ているみたいです」

 こうした新たなるシステムを熟知した上で、小久保はまた別の角度からも、選手の競争意識を促そうとしている。

 2軍監督の2年間で現有戦力を把握すると、監督就任1年目の2024年、2月のキャンプイン時に支配下枠を62人、上限(70人)まで「8枠」を残した。育成選手たちの“支配下枠争奪戦”を仕掛けることで戦力層の底上げを図るためだ。結果的に、開幕前に川村友斗、緒方理貢、仲田慶介(現西武)の野手3人、シーズン中に前田純、中村亮太(現ロッテ)、三浦瑞樹(現中日)の3投手と、捕手の石塚綜一郎を育成から支配下に昇格させている。

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 ちなみに2025年は、支配下枠65人でスタート。今回は「5枠」の争奪戦になる。

 さらに、主砲・柳田悠岐がルーキーイヤーの11年から4年間背負った「44 」を受け継ぐ「ギータ2世」こと、4年目の外野手・笹川吉康は2024年のセ・パ交流戦中に1軍に初昇格。6月14日の阪神戦(みずほPayPayドーム福岡)で初先発、初安打、初盗塁、初得点、翌15日には初本塁打もマークして、2日連続でお立ち台に立つ活躍を見せた。

 それでも将来を見据え、1軍の控えより2軍で試合に出続ける方がより成長につながるという方針から、笹川は再び2軍へ降格している。

 その降格を告げられた際に、小久保から「いつも見ているからな」と声を掛けられたことを、笹川は忘れられないという。

「1軍に上がった時も『あの左ピッチャーの変化球、フェンス直撃になったのはよかった』とか『技術的に向上しているね』と言われたんです。監督、全部見ているみたいです」

 笹川の驚きを、小久保に伝えてみた。

「全部は見てないです。2軍は見ます」