年俸総額で長らくNPB12球団トップに君臨してきた福岡ソフトバンクホークス。事業統括本部長である太田宏昭氏は1億円の打撃マシン導入を「え、安いな、みたいな感じですよ」と明かす。その心とは……。

 ここではスポーツライターの喜瀬雅則氏による『ソフトバンクホークス 4軍制プロジェクトの正体 新世代の育成法と組織づくり』(光文社新書)を抜粋し、福岡ソフトバンクホークス運営の裏側に迫る。(全4回の4回目/はじめから読む)

みずほPayPayドーム福岡/写真提供 福岡ソフトバンクホークス

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1億円の打撃マシンは「効率がいい」から「安い」

 最新鋭の打撃マシン「トラジェクトアーク」は、3年間のリース料が1億円といわれている。もちろん、その機能はすごいの一言なのだが、たかだか野球の練習用の器具に「稼いでくる事業側からしたら、高過ぎるのでは、とは思ったりしないんですか?」と、私のスモールな発想から、ついそんな疑問をぶつけてみた。

 太田は、一笑に付した。

「え、安いな、みたいな感じですよ。だって、効率いいじゃんと思いますから。1億円使って、そのマシンを何人も使えるじゃないですか」

 確かに、その通りだ。打撃投手のマンパワーなら、限界もある。実戦に近い練習をするために、現役の投手を使うわけにもいかない。それが、テクノロジーの力で、当日に先発する相手投手のタマを、AIでリアルに再現することができて、しかも機械は“疲れ知らず”でそれこそ、何人だろうが、何時間でも投げ続けてくれる。

現役時代の斉藤和巳

 私も「そういうことか」と、つぶやいてしまった。

「そうですよ。人にかけるものって、その人が活躍しないと、ゼロになってしまう。でも、システムはいろんな人が使えるし、それでシステムが成長すればいいわけです。もちろん、額にもよりますがね」

 その発想の中で、4軍制という育成システムに投資して、より良い形に育てていく。発想も、機械も、システムも、どんどん変化していく中で、その革新の波に乗っていく。

「この変化が速いですよね。やっぱり時代が速いんですよ。AIが入ってきて、ものすごく速くなった。我々の営業の仕方も大きく変わっているんです。マーケティングもそう、R&Dもそうですけど、ITを使って、AIを使ってやるのが当たり前になっている。それを僕らが理解してから、ではなく、直接分かる人間がやった方がいい。それはチーム側もそうで、それこそ20代、30代くらいのよく知っているメンバーをど真ん中に置くと、必然的に早く代謝していきます」