小久保による打撃コーチの定義

「僕が1軍監督をやって、求めることは『この選手の打撃フォームをこうしてくれ』ということではない。この選手はこういうタイプだからこう使おうとか、守備と走塁で必要だから1軍に置いておこうとか、です。このままの打ち方だったら試合でヒットが出ないよね、じゃあ、ファームに行かそうか、となる。1軍に来て、打撃フォームで悩んでいるような選手は1軍じゃいられない。だから、打撃指導はいらないんです」

 小久保によると、打撃コーチの定義は5項目にまとめられる。

(1)練習メニューの作成
(2)打順の提案
(3)相手投手の攻略法
(4)ベンチのムード作り
(5)ネクストバッターズサークルから打席へ向かう選手への精神的アプローチ

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 選手が自分のデータを読み込んで、自分の調子や修正点を探し出して調整するように、打撃コーチも選手個々のデータを分析して(1)(2)(3)を立案し、AIにはまだできないであろう、人間的な感情が含まれた(4)(5)に試合中は傾注する、と読み解ける。

 つまり、打撃コーチは試合における打撃面のマネジメントに専念、個々の選手の技術向上に関しては、最新鋭の機器を活用しながら、2025年から新設された「R&Dグループスキルコーチ」が担うことになる。

 球界にも前例のない思い切った挑戦だが、2025年から新役職のCBO(チーフベースボールオフィサー)に就任した城島健司も、城島にも迷いは感じられない。

現役時代の城島健司

「それも、トライ&エラーでやってみて、やっぱりバッティングコーチが指導した方がいいねとなるかもしれない。そうしたらまた戻せばいいだけです。自分たちがプレーしてきた時とは野球が変わってきているし、自分たちが野球をしていた時に、いわゆる技術指導をAIがやって、動作解析を基準にするという時代が来るなんて思わなかったわけですよね。選手とコーチの関係性も変わってきていますし、我々の組織はそこにより敏感になっていかないといけない。その点で、孫さんがすごいなと思うのは、議題に上がったら『まずやりなさい』と言う。そういう面ではやりやすいチームであると思うんです」