「1軍にいる子たちは、自分で考えてプランを立てられるんです。でも、最初はティーチングが必要なんですよ。0から1を作るというのがコーチの仕事。0の人に100をかけても、永遠に0なんですよ。でも、1に100をかけたら100になる。だから0から1までは、ティーチングが絶対に必要なんですよ。でも、1の後はコーチングでいいんです。だから、1軍のコーチはコーチングでいい。

 一方、4軍のコーチや3軍のコーチは絶対、ティーチングが必要なんです。

 とことん付き合う時間が必要で、反復練習をしないとモノにならない。そういう考え方も含めて、1を作るまでの作業がないと、どれだけいい最新の機器があっても、使い方が分からなかったりする。それでも打てればいいんですが、何のために打っているのかということが、知識として分からないといけないんです」

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「1」の土台を持つ1軍選手に指導は不要

 研修を通して人材開発、組織開発、制度構築を支援する「日本能率協会マネジメントセンター」のホームページから、コーチングとティーチングの定義を引用してみたい。

 コーチングは「自らの力で答えを導き出すことを目的とした人材育成の手法で、基本的には1on1の対話形式で実施する。最初から指導者が答えを教えたり、一方的にアドバイスしたりする方法ではなく、対象者が答えを自分自身で導けるよう、コーチが多角的に質問して誘導していく」。

小久保裕紀

 一方、ティーチングは「自分の知識やノウハウを相手に教える手法。先生が生徒に授業を実施するといったように、知識・経験が豊富な人が講師となって指導する。指導者が答えを教えるのが特徴」だから、0から1にアップさせるために、3軍と4軍では「教える」1軍レベルの選手は、自分の現状をデータで確かめ、判断することができる。1の土台を持っていれば、その知識や経験則から、最大限に出せる「乗数」を見つければいい。

 1軍は、自分で答えを見つけられる“仕上がった選手”を動かす場なのだ。だから、打撃指導も1軍では「いらないでしょ」と小久保は言い切るのだ。