宮崎さんは力なくこう答えた。

「そうです。その通りです」

宮崎さんは寂しげに続けた。

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「ひどいもんですね。しかし、生き残るためには他に方法がなかったんです。信じられますか? 食感は今でも記憶にありますよ。味なんかないですよ。もう何もわかりませんよ」

飢餓状態にある抑留者たちは、こうして自らの命脈を繫いだのである。

「それが抑留の真実です。私たちは間違っていたのでしょうか」

老翁の問いかけに、私は小さく首を横に振ることしかできなかった。

早坂 隆(はやさか・たかし)
ルポライター
1973年、愛知県生まれ。『昭和十七年の夏 幻の甲子園』で第21回ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。日本の近代史をライフワークに活躍中。世界各国での体験を基に上梓した「世界のジョーク」の新書シリーズも好評。
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