「痛い思いをしないといけない。でも…」

「痛いし、怖い。痛い思いをしないといけない。でも、刺激を待っていたときもあった」

 しばらくは発覚しなかったが、中学1年のときに兄との関係を母親に知られた。

「エアコンをつけながら、妹と並んで部屋で寝ていました。そこに兄が間に入ってきました。その後、母親が洗濯物を置きに部屋に入ってきた。私の下半身が脱がされている状態に不審に思ったのか、『何をしてるの?』と言われました。兄との性的な関係について、『小5から』と噓うそを言いました。あとで知ることになりますが、妹も触れられたことがあったようです」

ADVERTISEMENT

 兄はしばらく性的虐待をやめていた。しかし、中2の夏から再発する。そして翌年の2月、まなみが自ら担任に話をしたことで児相に保護された。

特に性的虐待されていた年齢は「13歳」

 神奈川県中央児相の調査では、性的虐待について受理時の子どもの年齢で最も多かったのは13歳(36件、12.8%)で、次いで15歳(30件、10.7%)、11歳(29件、10.3%)、12歳(26件、9.3%)、16歳(24件、8.5%)、14歳(21件、7.5%)などとなっている。小学校高学年から受理件数が増加傾向で、小学生が112件(40%)、中学生が87件(31%)、高校生は50件(18%)で、未就学児も31件(11%)となっている。

 前回調査では中学生が最多だったが、被害者が低年齢化している。また、相談経路としては「学校」が76件(27%)と最多だ。次いで「警察」の46件(16%)。まなみと同様に中学生のころに学校を通じて児相に通告されるケースは多い。

援助交際やリストカットで救いを求める少女たち

 そんなまなみが「死にたい」と思うようになったのは高校1年の冬だ。父親とのけんかで、「家を出ていけ」と言われ、自分を「迷惑な存在」と思い、カッターで腕を切った。そこから癖になった。今では、恋愛やネットでの出会い、援助交際、市販薬のODに救いを求めている。

 自傷行為は中学のころからだった。そのころはコンパスで手をえぐっていた。社会科のプリントには「家に帰りたくない」と書いた。兄に対して憎しみが湧き、「死ねよ」「殺したい」と思うこともあった。

写真はイメージ ©getty

「(Twitterの)病み垢(垢はアカウントのこと。Twitter上で不安なことや希死念慮などネガティブなことをつぶやくアカウントやその集まりのこと)でつながった男性と付き合っています。毎日、LINEで通話しています。基本的には『かまちょ』(かまってちょうだい、の略で、寂しがりやの意味)なんです」

自傷行為の目的は「精神を落ち着かせるため」

 自傷行為は自殺を目的として行っているわけではない。むしろ、精神を落ち着かせるための行為だ。「非自殺性自傷」と呼ばれる。アメリカ精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-Ⅳ-TR(修正版、2000年。日本版は2002年刊行)では境界性パーソナリティ障害の一症状と認識されていた。しかし、2013年に作成されたDSM-5(日本版は2014年刊行)では、診断基準として「自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し」が入っているものの、境界性パーソナリティ障害とは独立した診断カテゴリーになった。つまり、自傷それ自体を治療の対象とする考えに変化したのだ。

◆◆◆

【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

次の記事に続く 「弟の遺体は山の中で見つかりました」姉は生理のお祝いの日にレイプ、弟は殴られながらレイプ…男女関係なく「性的虐待する父親」のもとに生まれた姉弟の悲劇

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。