小4のときから実の兄に性的虐待を受けていたまなみさん。その影響ゆえか、高校1年のときには自傷行為を開始。ときにはコンパスで手をえぐったことも…。彼女の人生、家庭内で起きる性的虐待の実態を、フリーライターの渋井哲也氏の新刊『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』(集英社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©getty

◆◆◆

家庭内で起きるきょうだい間の性的虐待

「小2から中2まで兄から性的虐待を受けていました」

ADVERTISEMENT

 そう話すのは、首都圏に住む高校生、まなみ(仮名、18歳)だ。

「兄は『誰にも言うな』と言うので、従っていました」

 きょうだい間で起こる性的虐待の実態は、なかなか把握できない。

 神奈川県中央児童相談所が2023年3月にまとめた報告書がある。2017年度~2021年度の間に、県内の児相が性的虐待・性被害として受理したのは317件。うち281件(89%)は「事実あり」とされた。このうち、女児が251件(89%)、男児が30件(11%)だった。

 誰が加害者なのか。実父が102件(36%)と最も多く、次いで義父(36件)と継父(14件)、内夫(15件)を合わせると65件(23%)。まなみの被害と同じく、加害者が実兄であるケースは35件(12%)で、義父と同じくらい多い。前回調査と比較すると、実兄からの被害が多く、実弟(6件)を含めると、きょうだいからの性被害は48件(17%)だ。

 まなみは小4で兄と初めての性交をした。