近くには取手一高に取手二高。90年代まで人口は増え続けていた

 近くには取手一高、取手二高とふたつも高校がある。ちょうど訪れたのが中間テストの最中だったのかどうか、昼過ぎの取手駅前は高校生たちで溢れていた。ガードを潜って西口に向かう高校生もいれば、そのまま取手駅から電車に乗る高校生もいる。

 ホームの下に位置する取手駅の東口はいくらか年季を感じるものの、取手の正面玄関らしく堂々たる雰囲気も湛えている。これほどの高校生が出入りする駅ならば、町から活気が消えることもなさそうだ。

 

 さすがに近年こそ減少傾向にはあるものの、戦後の取手は1990年代まで人口が右肩上がりで増えていた。常磐線の複々線化、地下鉄の直通といった鉄道網の整備、そして茨城県内初の公団アパートの建設なども相まって、首都圏のベッドタウンに組み込まれたのだ。

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 いわゆる“いばらき都民”が暮らす町。かつての川港から脱却し、新しい性質の都市へと生まれ変わったのが、戦後の取手なのである。

 いまは、夕方になると取手駅から千代田線・小田急線直通の電車も出るようになる。取手から東京の真ん中・大手町までは約1時間。遠いか近いかは人それぞれだが、のどかさとほどよい活気と歴史の詰まった取手駅周辺の町並を見れば、暮らしてみてもなんだか悪くないのではないかと思える、そんな町であった。

写真=鼠入昌史

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