小説、YouTube…テレビ以外の表現の場で語ること
そんな彼にとって強みなのは、表現の手段をテレビ以外にも持っていることだろう。28年続けている深夜のラジオ番組『JUNK 爆笑問題カーボーイ』ではより深い話ができるし、ときには暴走も許される。最近ではYouTubeでコントを配信するようになった。
あるいは小説は、思考実験の格好の手段となっている。たとえば、2作目となる『文明の子』(楓書店、2012年)を書く動機は、太田が尊敬するある表現者が、東日本大震災のあとで「戦後の日本は人間の命よりも効率を選んだからこうなってしまった」と文明を否定するかのごとく話していたのに対し、「戦後の日本の成長を否定するか肯定するか、そんな二元論でしか考えられないのは、何か違うんじゃないか」と違和感を覚え、何とか文明を肯定する方向に考えてみようとしたことにあるという(『CREA』2012年4月号)。
現時点での小説の最新作である長編『笑って人類!』(幻冬舎、2023年)では、分断された世界を近未来に仮託して描いた。同作には、物語の主要な人物の一人としてアンという、ある大国の大統領となる女性が登場する。太田によればアンは、往年の映画『ローマの休日』でオードリー・ヘップバーンが演じたアン王女のイメージだという。しかし、小説のなかでアンの周囲にマシューとかダイアナといった人物が出てくるのを読むと、『赤毛のアン』も元ネタの一つになっているような気がする。
折しも太田はこの4月にNHKのEテレで始まったアニメ『アン・シャーリー』で声優として、主人公アンの家の隣に引っ越してきたハリソンという男を演じる。そのキャラクターデザインからして、いかにも偏屈そうな役で、彼にふさわしいといえる。なお、Eテレではこのほか、平日夜の5分間番組『Eテレ2355』で毎週金曜に「夜ふかしワークショップ」と題し、太田のナレーションによる解説のもと、相方の田中裕二が身近なものを使ってちょっとした実験をするコーナーを10年以上にわたって続けている。
太田が爆笑問題のリーダーであり頭脳であることは間違いない。では、相方・田中裕二の立場はどうとらえるべきなのか。

