今ならわかる「空回りするほど無理する必要はない」

――演じてみる楽しさはあったけれど。

坂本ちゃん う~ん。当時は「ちょっと違うのにな」ってモヤモヤして。だから今はラクですね「自分のままでいいんだ」っていう理解が、自分的にも世間にも深まって。もちろんタレントとしてテンション上げなきゃいけない部分はあるんですけど、空回りするほど無理する必要はないんだっていうのが、やっとわかった気がします。あの頃はやっぱり自分に自信がなかったから。

――自信がついたことで、タレントとしてもレベルアップしたんですね。

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坂本ちゃん そうですね。あと当時「オネエっていうのは毒を吐かなきゃいけない」みたいな風潮があって。もちろんわたくしにだって、毒の部分はあるんですけれど。

――無理してツッパらなくちゃ、みたいな感じですか。

坂本ちゃん そう。そこまでない毒を、ノウハウもなく無理やり吐く。それでどんどんヘコんでいく、みたいな。たとえば、マツコ・デラックスさんのかっこいい、素敵な毒とかはいいんですけど、わたくしの場合は「あ~あ、無理してズバズバ言わなきゃいけないのか~」って。

――坂本ちゃんは毒を吐くキャラっていうイメージがないですよね。

坂本ちゃん そうですか、ありがとうございます。

犯罪者とかやってみたい!

――坂本ちゃんの「口調が柔らかで丁寧」というところに好感を持っている人が多いんじゃないでしょうか。

坂本ちゃん そう? 昔からこんな感じなんですけど。なんか嬉しい。

――子どもの頃からですか?

坂本ちゃん 気づいたらこんな感じで。意識したこともないんですけれど。

――それでちょっと女性的に感じる人がいるんですかね。

坂本ちゃん あ~、だからかしら。いまだに「オネエは作ってるキャラなんですよね?」って言われることがあるんです。でもわたくし、今はもう自分のままで、葛藤はない状態です。むしろ「じゃあ、男らしい路線で」とかやらされたら、どんどんストレス溜まっちゃいそう。

――自分とは違う性格を演じる俳優業にはもう興味はないんですか?

坂本ちゃん 俳優はやりたいけど、演技であってもわたくし、タチの男役とかはできないんですよ。前にドラマに出させていただいて、「このオカマが!」とか言われて、倒れて頭打って、起き上がったら、いかつい男になって怒るみたいなシーンがあったんですけど。それがね、何回やってもうまく行かず。「お前ら、何やってんだ!」ってセリフが、棒読みなんですよ。できなかったんですよ~。どうしてできないんでしょう?(笑)。今でもそのシーンを思い出すと恥ずかしくて!

――どういう役をやりたいですか?

坂本ちゃん わたくしね、犯罪者とかやってみたいんです! 今も日々、歩きながらいろんなこと考えてるんです。すごい生意気発言なんですけど、映画『羊たちの沈黙』のレクター博士とかやってみたい。あとドラマ『あなたの番です』で「脇役だったのに最後にどんでん返しで犯人だった!」みたいな役とかね。

©︎文藝春秋

写真=深野未季/文藝春秋

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