――否定から生み出されることって少ないですものね。

坂本ちゃん はい。あと無知っていうのは本当に怖い。やっぱり情報をちゃんと知らなきゃダメだなって。いろいろなことを勉強しやすいネットの時代にも感謝ですね。調べたら糖尿病のこともよくわかりました。だから今、わたくしは健康になれたんです。

嫌なことを言われ、ムッとする自分自身が新鮮だった

――じゃあ、自分への信頼度も上がって。

ADVERTISEMENT

坂本ちゃん はい。勉強するとめちゃくちゃ自分に自信がつきますね。

 わたくし、ゴールデン街で最初に店番を始めたとき、お客さんにいろんな言葉の洗礼を受けたんですよ。「落ちたタレントの成れの果て」なんてことも言われて。それに当時はオネエキャラブームで「ねえ坂本ちゃん、今のオネエキャラブームに乗れてない自分をどう思うわけ?」とか言われるんです。そのつど「うわ~」って思ったりしたんですけど、ふと「飲みに来て、人が嫌がることを面と向かって普通に言い放つ、こういう人もいるんだ」って気づいて、お勉強になりました。ある意味、それまではわたくし、人に恵まれていたんですね。

 あと基本、わたくし温和なんですよ。喜怒哀楽の“怒り”って感情があんまりない人なんです。でもさすがにいろいろ言われてムッとしたりイラッとしたりする自分がいて「ああ、こういう感情もあるんだ」って。

©︎文藝春秋

――自分も怒れるんだ、と。

坂本ちゃん そうなの。イラッとしながらも「でも面白い、こういう経験あんまりできないな」ってね。一時期すごく売れちゃって、いろんな仕事をさせてもらった後、仕事が少なくなっていくという体験もさせてもらいました。

 上から目線で失礼かもしれないですけど、店番で芸能界じゃない一般の人の意見を聞けたのも、すごく糧になったというか。負け惜しみじゃないんですけど、あのまま売れ続けていたら、一般的な世間がわからないまま、自分でも勘違いとかしちゃったかも。

――電車の乗り方がわからないスターみたいに。

坂本ちゃん よく聞きますよね。ローティーンでデビューしたから、いろんなことができない、わからない人とか。幸い、わたくしはデビューが30歳も過ぎてたんで、一応社会も分かりながらの芸能生活でしたけれど。

 でもね、やっぱり店番はそろそろ卒業したいな、芸能の仕事をきちんとやりたいなっていうのはあります。

――そうなんですね。