LDH JAPANの社長に復帰したEXILE HIROと新日本プロレス社長に就任した・棚橋弘至の初対面。社会人経験なしに社長になった2人だが、ビジネスマナー問題や決算書の読み方への対処もやはり普通ではなかった。

 初めてのLINE交換、そして意外な体型についてのお悩み相談まで――。(全3回の3回目/#1#2を読む)

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――日本のプロレスも海外では昔から高い支持を得ていますよね。アメリカの団体で活躍している選手も多いですし。

EXILE HIROさんと棚橋弘至さん ©文藝春秋 撮影・三宅史郎

棚橋 新日本プロレスはアメリカのAEWという団体と交流があって、海外大会も年に3〜4回は開催しています。アメリカやヨーロッパはもともと日本のプロレスのファンが多いので、次は中国などアジア圏にももっと進出したいですね。

――WWEでも中邑真輔選手などの日本人選手が活躍していますが、海外で成功するプロレスラーに特に必要な要素ってあるんですか?

棚橋 英語力は大切だと思いますね。選手の実力や試合のクオリティは世界レベルだと思うんですが、やっぱり英語のマイクパフォーマンスで会場を盛り上げるのは難しくて。

HIRO うちのアーティストの場合、英語ができる子は増えてきたんですけど、そこで逆に重要になるのが日本らしさというか、メイドインジャパンのアイデンティティなんですよね。オリジナリティをしっかり打ち出していかないと、海外では埋もれてしまうと思うんです。

棚橋 それはプロレスでも同じですね。演出を現地仕様に変えてしまうと、「俺たちが見たかったのはそれじゃないんだ」って言われちゃうんです。「新日本プロレスらしいものが見たい」と思ってくれているので、むしろ自分たちらしさを出していくことも大切だと実感しています。

「数字にとらわれすぎるとクリエイティブな部分で大胆な発想がでなくなってしまう」

――海外展開となると、より高度な経営判断が必要になりそうですが、もともとパフォーマー出身のお2人は、ビジネス面をどう学ばれたんですか?

HIRO 社長になった時はまだバリバリの現役パフォーマーだったので、チームの統率とクリエイティブに集中したく、細かい数字の部分は専門のスタッフに任せていました。今思うと後悔が多いですが、そのおかげで迷わずにクリエイティブに専念できていたのも事実で。その時の勢いが今のLDHの礎になっているので、全てが学びだと思っています。

 過去の良いところ、悪いところすべてを教訓にして、本当の意味でこれからがLDHの本番だなと感じています。コロナ禍以降、社長に戻ってからはLDHもガバナンスやコンプライアンス体制を徹底的に強化して、一芸能事務所からエンターテインメント企業へと成長できてると思います。

 最終的にすべての責任を負うのは自分なので、クリエイティブだけではなく、会社を管理できるように経営面でももっと積極的に勉強して、LDHらしい経営を目指しています。
 

 

棚橋 僕は先日、生まれて初めて損益計算書を見ました。「社長も読めるようになってください」と言われて一生懸命眺めてみたんですが……これといった答えはでませんでした。

HIRO ははは(笑)。数字はもちろん大事ですけど、数字にとらわれすぎるとクリエイティブな部分で大胆な発想がでなくなってしまう気もするんですよね。損して得取れじゃないですが、目先の数字よりも長期の目線が大切ですし、目に見えない効果があるのもエンターテイントですから、数字ですべてを判断するのは本当のチャンスに気付く機会を失ってしまう可能性もあるので、その辺のバランス感覚が大切なのかなと。

棚橋 ふと浮かんだアイデアや直感を大事にしたいときもありますよね。

HIRO そうですよね。僕らはそういうことを求められる立場でもありますから。クリエイティブ面で攻めの姿勢は崩したくないですが、会社の数字や状況についても考えるのが自分の責任で、ある意味つらい立場なんです(笑)。