――そうなんですか。
鶴本 マサイの中では恥ずかしいことらしく、誰にも聞けないから自分で用を足せる場所を探さないといけないんですけど、人に見られることも当然NGですし、かといって、安全な場所じゃなきゃできないしで、我慢しすぎて膀胱炎になったこともありました。
――それは大変でしたね……。いろんなマサイ独自のルールがある一方で、現代的な変化もあるのでしょうか。
鶴本 以前は、マサイ族の子どもの就学率は0に近かったと思いますが、今は義務教育としてマサイの子どもたちも学校に通うようになりました。そうして都会に出ると、文化面も影響されますよね。
スマホは当たり前だし、仕事に就いている人はマサイの伝統服ではなく、普通の洋服を着てたりもします。
あと、下の歯を抜くのも伝統なんですけど、それをしない人も増えてきています。
マサイ族が下の歯を抜く“意味”
――ジェームスさんも下の歯を抜いていますよね。これにはどんな意味が?
鶴本 本来は、意識が混濁するほど体調が悪化した時、口をぐいっと開けて抜いた歯の部分から薬を流し込むために抜いているらしいです。
ただ、最近はファッションとしての意味合いが強いみたいで、マサイの人からすると、下の歯がない方が男の人はハンサムで、女の人はかわいいっていうのがあるみたいです。
――ジェームスさんはどうやって歯を抜いたんですか?
鶴本 「19歳の時にナイフで抜いた」って言ってます。しかも麻酔なしで抜くそうで、男の人はその時、泣いたり痛そうなリアクションをしてはいけないっていうのも、マサイ戦士の掟らしいです。泣いたら、「お前は女だ」って言われるって。
ジェームス 痛いけど頑張れ。
鶴本 「痛いけど頑張れ」(笑)。
あと、男尊女卑の部分でも変化はあって、昔は奥さんが何か失敗すると、鞭で血が出るまで叩かれたらしくて。
――なんと…夫が妻を鞭で叩くということですか。
