村では“戦士”という自覚が強い
――ジェームスさんが本気で怒ったところを見たことは?
鶴本 見たことはないですけど、儀式の時に踊ったりして興奮しているところを見ると、やっぱり部族の人なんだなって思います。
いつもはマイペースでおっとりしてますし、マサイなんてことを意識しないくらい普通なんですけど、やっぱり村に行くとちょっと変わりますね。
――「マサイスイッチ」が入るというか。
鶴本 入りますね。日本にいる時はまったりしてるんですけど、村では“戦士”という自覚が強いので、性格もキツいというか、緊張感ある感じですね。
――パートナーとしては「マサイモード、ちょっと解除してくれないかな」みたいに思うことも?
鶴本 正直、思いますね(笑)。もっと構ってよ、って思っちゃいます。
彼が面接に行く時、「マサイの服はちょっと…」
――そんなジェームスさんも今は日本でお仕事を?
鶴本 現在はレストランの洗い場で働きながら日本語教室に通っています。日本語を勉強中なので、もう少し上達したらまた仕事の幅も広がっていくかなと。
仕事と言えば最近、それでちょっとケンカしてしまって。彼が面接に行く時、私が「マサイの服はちょっと…」って言っちゃったんです。
――マサイの服だと、面接で不利になってしまうのでは、ということで?
鶴本 そうですね。彼はマサイとしての誇りを強く持っているので私も葛藤があるんですけど、マサイの伝統服で行くと、人によってはふざけてるように思ったりビックリする人もいて、それで面接に落ちてしまったらもったいないなと思ってしまって。
今日も「ルング」っていう護身用の木の棒を持つかどうかって話になったんですけど、職質されたら面倒だし、そもそもここは治安が悪くないから持たなくていいよね、みたいなやり取りもしました。
ジェームスさんは、マサイの中でも誇り高い方
――ジェームスさんは伝統的なタイプのマサイ戦士?
鶴本 マサイの中でも誇りは高い方だと思いますし、自分がマサイであることが本当に好きですね。
あと、これはマサイ特有なのかどうかわからないですけど、彼は悩むことは無駄だと思っているので、悩み相談をされたこともないし、嫌なことがあった時やストレスを感じたら、すぐに逃げると言っていますし、それを記憶から取り去るらしいんです。
写真=石川啓次/文藝春秋
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