日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。

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年金改革の余波

 与野党間の争点となっていた年金制度改革関連法案は、自民、公明両党と立憲民主党による1週間程度の修正協議で合意に至った。自民党内の抵抗で削除された基礎年金の底上げ策について、復活を求める立民の要求を与党はほぼ丸のみ。当初の政府案通りの改正となり、厚労省では間隆一郎年金局長(平成2年、旧厚生省)以下、局内にほっとした空気が漂う。

年金制度関連改革法案は当初の政府案通りに ©Wakko/イメージマート

 もっとも曲がり角を迎えた年金財政から見れば、ごまかし以外の何物でもない。基礎年金の給付水準アップのため、比較的安定した厚生年金の積立金を事実上「流用」。現在の厚生年金受給者の受給額が一時的に低下する点にも緩和措置をあてがう「シルバー民主主義の見本」(厚労省OB)となっているためだ。

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「100年安心」のフレーズに囚われ、あえて語義を曖昧にした「マクロ経済スライド」で給付水準を頭打ちにしつつ、積立金を取り崩しているのが実態である。

 昨夏まで若林健吾年金課長(10年、同)らは内々の説明で「厚生年金積立金は使わない」と繰り返してきた。念頭にあったのは国民年金保険料の納付期間を現在の40年から45年に延長する案だ。

 だが参院選などに神経を尖らせる政府・与党を忖度し、当時の橋本泰宏年金局長(昭和62年、同)が納付延長案の取り下げを審議会で表明。今回、日本維新の会や国民民主党は日の目を見ずに終わった納付延長案や、支給開始時期引き上げを主張しつつあったが、党勢が振るわぬ立民が大甘の内容に飛びつき抜本改革の機運は立ち消えに。法案成立を優先する厚労省にとって救いの神となった格好だ。とはいえ、底上げに伴い年2兆円程度とされる国庫負担増への対応策などは曖昧なまま。与野党も厚労省も「我が亡き後に洪水よ来たれ」を地で行ったわけだ。

この続きでは、厚労省の次官人事の動向を解説しています〉

※本記事の全文(約5700文字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年7月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では、下記の内容をお読みいただけます。

 

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出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】小泉進次郎 玉木雄一郎 若き政治家のコメ対決/羽生結弦ほか つながらない新生活様式/菊地功 コンクラーヴェ体験記

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