「ダジャレ好きな先生らしい言葉だな」

 ほどなく、越尾さんから連絡があった。「ナスが美味しくて美味しくて、やなせ先生が『あきナスは嫁に食わすな』だなと言ってます」という内容だった。

「あきナス」とは、ことわざの「秋」ではなく、「安芸」のことだ。「ダジャレ好きな先生らしい言葉だなと思いました。でも、あれが最後のやり取りになってしまいました」と徳久さんは語る。

 やなせさんは2013年10月13日に死去。享年94歳。

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 やなせたかしロードの命名や、ごめん生姜地蔵の建立から4年しか経っていなかった。

 84歳で約70年ぶりに母校の小学校を訪れてから10年間。故郷に尽くした最晩年だった。

撮影 葉上太郎
 

次の記事に続く 「逆転しない正義」「人生は喜ばせごっこ」優しいライオンとアンパンマンの原点がある「ごめんの町」で見えてきた“やなせたかしさんの人生哲学”