過干渉な母に「いい加減手を引け」と喝
部員は皆、仕事をもっているので全員が顔を合わせることは滅多にない。皆、都合をつけての自発的な行動である。この青年は時間があり、部長の「必ず来い」の命があったから、全部の集合に参加していた。
集合の連絡は部長からの電子メールで届く。1回目のポンプ点検のとき、この青年は母親が運転する車で出かけた。詰所前で、これを見た部長は烈火のごとく怒った。
母親には「息子がなんで学校をやめたか分かっているのか。最初に言ったはずだ。もうすぐ20歳になる息子に何をするのか。いい加減手を引け」、この青年には「いつになったら自立するんだ。お前の家からここまでたった500メートル、走って来い」と言い渡した。
実はこの母親は、息子が詰所に行こうとすると、車にエンジンをかけ、門前で待っており、いくら息子が断っても車に乗せようとしていた。たびたび言い合いが続き、このときは、つい根負けして車に乗ってしまったのだった。部長に詫びた。
出会ったとき、部長は必ず「昨日は何をした」と尋ねた。「何も」と答えると「生きているなら、必ず何かしろ」と言った。それから、この青年は、自分の部屋掃除、玄関掃き、庭の草むしり、風呂洗い、自分のものの洗濯、昼食づくりなどをするようになった。
母親は「それは私の仕事」と言い張ったが、「俺のことに口も手も出すな」と断った。3カ月後、一通りの家事ができるようになった。大人になったと感じた。
部員は皆親切だった。「大学へは行けよ」、「勉強してるか」、「予備校に行ったらどうか」、「将来、何になりたいのか」などと声をかけ続けていた。この青年は、最初は答えに窮していたが、部員たちの真剣な問いかけにしだいにはっきりと自分の言葉で話すようになった。
