フジワラ そうやって逆算して考えるってすごく大事ですよね。私の場合は、完全に「需要」から逆算して、「どういう絵柄で、どういう内容で、どういうターゲットに向けて描けば売れるのか」をマーケティングで最初に決め、そこに自分の絵柄を寄せていきました。当初は美少女イラストを描いていたんですが、修羅の道になるなと思って、児童書や子ども向けの広告の世界に方向転換しました。

「たぬきマルシェ」©フジワラヨシト

「選ぶスポーツを間違えない」工夫を

さいとう それって本当にイラストレーターとして食っていけるかどうかに直結する問題ですよね。例えばスポーツなら、バドミントンで世界一になっても日本で食べていくのは厳しいかもしれないけど、野球なら、トップ層じゃなくても食べていく方法はいろいろある。

 イラストレーターも同じで、本の挿絵だけを描いていても単価の上限があるけど、例えばゲームや広告の世界ならもっと予算がつくから、そちらでも活躍できればまとまった収入になります。最初からそこをちゃんと認識して、「選ぶスポーツを間違えない」工夫がすごく重要です。

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フジワラ と言いつつ、さいとうさんはハードルの高い激戦区のフィールドに挑まれましたよね(笑)。

さいとう もう激戦区中の激戦区だし、レッドオーシャンです! 頭のいい人は棲み分けられる場所を考えるんだろうけど、僕は「これが好きだから」で突っ走っちゃう(笑)。20代のときに絵柄を含めて表現の幅を広げたとしたら、30代では「俺はこれしか描けません」と狭めていくことでブランディングしました。

 それでうまくいったのは運もあったと思うし、とにかくエネルギー量が大きかったから道が開けたんだと思う。

フジワラ 私ものめり込むと数十時間集中して描きますが、熱量の高さは絵から伝わりますよね。私の場合、絵にストーリー性をもたせる細部への尋常でないこだわりをブランディングとして強みにしていきました。

その2へ続く

『コネ、スキル、貯金ナシから「好き」を仕事にするまでにやってきたこと』
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