反対に「ダメ出し」を食らった商品も…売れ筋のメニューは?
反対に、魚介を使ったペルーのマリネ料理「セビーチェ」は、苦労した商品だ。最初は、日本のさまざまなレストランで提供しているのと同じようにオリーブオイルを使い、ペルーがホワイトアスパラガスの産地であることから、ホワイトアスパラガスを使っていた。
しかし、大使や大使館のシェフに試食してもらう中で、「ペルーではオリーブオイルもホワイトアスパラガスも使わない」とダメ出しを食らう。大使館のシェフに、魚介を唐辛子と酸味のきいたタレで和えて、サツマイモとコーンを添えるという本場流のレシピを教えてもらい、現在の形になった。
SNSでは、パラオの「アホ」という餅入りのココナッツのおしるこ、トンガの「ケケ」という丸いドーナツなど、なかなか聞いたことのないメニューが話題になっているが、実態はちょっと異なるようだ。
人気なのは、ハンガリーの「鴨のロースト トリュフソース」、シンガポールの「チリクラブ」、イタリアの「タリアータ」など。くら寿司の広報は「聞きなじみのあるものや、想像しやすい商品が比較的人気」と話す。意外と日本人は食に対して保守的なのかもしれない。寿司では通常店と同様に「ふり塩熟成まぐろ」が一番人気だ。
スシロー同様に、サステナブルな商品も展開している。日本で初めて国際的基準の「オーガニック水産物」として認証された「オーガニックはまち」や、磯焼けを引き起こす“海の厄介者”ニザダイにキャベツを与えて独特の臭みを顕著に軽減した「キャベツニザダイ」、規格外野菜を原料としたシートを使った「ヘルシーロール(えびマヨ)」などがある。
広報によると、寿司と各国料理で販売比率は半々だという。顧客層は通常店と変わらず、日本人がほとんど。意外にもインバウンドの顧客は非常に少ない。
スシローと違い、くら寿司は30日前から予約できるが「事前予約は1カ月先まで埋まっている状況」(広報)。店頭予約は、おおむね午前中に受付を終了するほど大反響だ。筆者も2日続けてチャレンジしたが、午前10時過ぎにはもう受付終了になっていた。なお、スシローは持ち帰りできないが、くら寿司は一部メニューを持ち帰りできる。
万博は回転寿司の「ルーツ」でもある
1970年の大阪万博は、さまざまな食文化が広がるきっかけになっていた。回転寿司という業態が今日のように普及したのも、ここがきっかけとされる。会場内を周回していたモノレールの駅前に、東大阪市発祥の元禄産業が「廻る元禄寿司」を出店すると、連日長蛇の列ができた。これで回転寿司という業態が世間に認知され、ブレイクした。
そして今回の万博では、スシローとくら寿司が現代の回転寿司の代表格として、元禄寿司に倣い世界の回転寿司へと飛躍するべく、企画を練った。全ての魚介ネタを養殖で調達するスシローも、世界70の国・地域で親しまれる名物料理を一挙に提供するくら寿司も、回転寿司の未来を見据えた提案で興味深い。どちらも通常店より高額な設定であるものの、万博の数あるパビリオンの中で飛びぬけた人気を維持している。次の時代に向けて、回転寿司がどう進化していくのか楽しみだ。
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