戸田さんが知るコッポラ新作『メガロポリス』“構想40年”の真実

――戸田さんは、86歳で新作『メガロポリス』を制作されたフランシス・フォード・コッポラ監督から、かなり昔に『メガロポリス』の構想をお聞きになっていたとか?

戸田 ええ。実は『地獄の黙示録』の頃にコッポラは『メガロポリス』の構想をお話しになっていました。ですから、「構想40年」というのは本当です。

 2024年、カンヌ国際映画祭で上映した後に来日された時も映画に関する話はしましたが、まだその時点では私は作品を観ていなかったので、字幕翻訳に関して何か話したというわけではありません。

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 ただ、この『メガロポリス』はこれまでコッポラが作ったことのない作品に仕上がっていたので、彼にとっても大きなチャレンジだったと思います。アメリカでは残念ながら酷評も多いですが、未知に挑戦するコッポラの姿勢は素晴らしく、彼の天才ぶりが作品にも現れています。古代ローマ史や哲学的な内容も、コッポラからすると知っていてあたりまえで、知らない方が勉強不足、ということになるのでしょう。

 

「しっかり寝て、しっかり食べて、納期通りに仕上げる」

――トム・クルーズ、フランシス・フォード・コッポラ監督もそうですが、戸田さんが生涯現役でいられるのはなぜですか? 字幕翻訳の仕事をやめたいと思われた時はありますか?

戸田 一度もありません。どんなにつまらない作品でも、今回の『MI』のように最後の最後まで追いかけられるような作品であっても、これまで50年間一回もやめたいと思ったことはありませんし、納期に遅れたこともありません。

 秘訣はとくにありませんが、しいて言うなら一生懸命やること。ただ、どんなに忙しくても必ず7時間は寝るようにしています。これは人にもよると思いますが、私は7時間以上寝ないと翌日使い物にならないので、しっかり寝て、しっかり食べて納期通りに字幕翻訳を仕上げることを繰り返しています。

 運動は大嫌いですし、健康にも悪いことばかりしているのですが、丈夫に産んでくれた母に感謝です。

 最近のCGだけのアニメ映画に少しがっかりすることはありますが、自分が嫌だと感じる映画は観ずに、昔のクラシック映画の名作を観返せばいいだけですから、死ぬまで映画との縁が切れることはないでしょうね。

撮影 石川啓次/文藝春秋

次の記事に続く 英語の勉強でもなく、多くの映画を観ることでもなく……戸田奈津子(88)が伝えたい字幕翻訳家に欠かせないこと「映画を愛することはもちろんですが……」

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