「獺祭」「久保田」「余市」が飲める!

 天ぷらなどは、通常のくら寿司で提供しているものよりも素材や製法にこだわったメニューとなっている。もちろんドリンクも日本酒の「獺祭」や「久保田」、ウイスキーの「余市」など、通常の回転寿司では出てこないようなラインナップをそろえている。「オトナ~」な感じだ。

獺祭はグラスで980円。レーンで勢いよく運ばれてくるが、なぜかこぼれないのが興味深かった

 さて、気になるのが会計額である。筆者が訪れた際、会計は1人当たり5000円程度だった。通常の回転寿司の客単価は高くても2000~3000円ぐらいだろうから、ちょうど2倍ほどである。少しお高めであるが、その分、通常の回転寿司とは違った「素材へのこだわり」を見せたり、素材の産地を強調したりで「付加価値」を意識させているわけだ。

 メニューの多様さやレーンが回るところなどは、確かに回転寿司。ただ、そこに店舗やサービス、商品をリッチにした、まさにプレミアム回転寿司というべき業態であった。

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なぜ「高級店」を作ろうとしたのか

 ところで、くら寿司がこのような高級店舗を作るのはどうしてだろうか。背景には「安い」イメージのある回転寿司業界が岐路に立たされていることがある。

 例えば、運営コストの上昇はその一つだ。円安や地球温暖化による漁獲量の減少、輸送費の高騰などで魚介類の値段は上昇している。昨今日本を騒がせるコメの高騰や人件費の高騰も回転寿司業界を襲っている。特に「安い」を売りに、一貫100~200円程度のメニューが中心の回転寿司チェーンは、この煽りをモロに受ける。

 こうした状況に加え、国内の回転寿司店が飽和していることも各社を悩ませる。寿司チェーンの国内店舗数は、2024年7月時点で4164店舗。2023年は4201店舗だったので少し減っている。これは2年連続での減少で、国内市場の天井が見え始めている。簡単に言えば「これまでの格安回転寿司が成立しづらい」条件が生まれているのだ。

 であれば、1品当たりの値段を上げた高単価の業態を生み出すことが一つの解決策になる。だからこその、無添蔵なのだ。レポートしたように、同店は産地直送の魚などハイグレードなメニューや、ゆったりとしていてシックな店舗内装が特徴である。

 接客も通常の回転寿司と比べると一つ一つが丁寧で、それぞれのメニューの値段に「サイレントサービス料」が含まれてこの値段になっていると思われる。さまざまなムダを切り落とし、商品の原価ギリギリで薄利多売モデルで売り上げを立ててきた従来のモデルとは、同じ回転寿司でも全く違う。

 ちなみにこうした「脱・格安回転寿司」の動きは、競合の「スシロー」でも見られる。